次の敵は誰か? 


セルジュ・アリミ(Serge Halimi)

ル・モンド・ディプロマティーク統括編集長

(仏語版1月号論説)

訳:土田修 



 北大西洋条約機構(NATO)のアナス・フォー・ラスムセン前事務総長は正月を待つことなく、新年の挨拶状を出した[2020年12月16日付ウォール・ストリート・ジャーナルに書いた記事のこと]。その中で彼はドナルド・トランプ氏の退任後直ちにNATOが遂行すべき任務についてこう述べている。「2021年に米国とその同盟国はひと世代に一度しかないチャンスに恵まれるだろう。それは世界的規模で後退している民主主義を押し戻し、ロシアや中国のような独裁的国家を守勢に回らせるチャンスだ。そうするには主要な民主国家が団結することが必要だ」(1)。20年前にアフガニスタン、ついでイラクへの侵略戦争に参加したこれら多くの民主国家が行ったことがまさにその団結なのだ。従って、今こそより強力な敵対国を相手にすべき時なのだ……。

 だが、何から取り掛かれば良いのか? 米政府が民主主義の旗印を掲げた十字軍の「リーダーシップ」を発揮しようとしているものの——2020年11月24日、「米国は[国際社会に]戻ってくるし、世界をリードする準備が整っている」とジョセフ・バイデン氏は宣言している——、米国人同士が主要な敵対国のアイデンティティに関してもはや意見が一致していないということを、米国の同盟国は理解した方がよい。彼らの頭の中は地政学とはほとんど関係なく、すべてが国内抗争に関係している。民主党員にとって敵はまずロシアだ。というのも、この4年来、下院議長ナンシー・ペロシ氏ら民主党の指導者は「トランプにおいてはすべての道はプーチンに通ずる」と繰り返し言ってきた。これに対し、共和党員は幼稚園児の喧嘩を思わせる「売り言葉に買い言葉」風のやり方で、「北京バイデン」という当て擦りのスローガンの拡散で応酬した[訳注]。それはバイデン氏の次男ハンター・バイデン氏が中国ビジネスに関わっていたからだ。それに、[共和党が]民主党にその責任を負わせているグローバリゼーションは中国にとって都合が良かった。それまでのことだ。

 昨年12月10日、マイケル・ポンペオ国務長官は米中関係をさらに悪化させようとした。中央情報局(CIA)長官を務めた彼はまず、プライバシーの侵害に対する懸念を真正面から持ち出すことで「習近平は一人一人を監視している」と世界に警告を発した。ついで彼は中国が毎年、米国に送り込んでいる40万人の留学生の一部は産業や学術上の機密を盗み出そうとしており、米国の多くの大学自体が「中国政府によって買収されてしまっている」と非難した。さらに彼はファーウェイ社製品の利用者が「中国公安当局の監視下に」置かれようとしていると決めつけた(2)。これこそが、今後、バイデン氏に反対するために共和党員が使おうとしている決まり文句だ。それが、トランプ氏に反対するため民主党員が4年間煽り続けてきた偏執狂的な「反ロシア感情」に取って代わることになる。南シナ海、台湾、ウイグル人の境遇、香港、これらすべての問題はバイデン新政権の対中政策の態度決定を知る上での試金石となることだろう。

 ラスムセン氏は少なくとも、「同盟国が大統領に当選したジョー・バイデン氏の門前で心配そうな表情をして大統領就任を待っている姿」を見抜いていた。だが、内政が揺れている米国が主導する同盟関係にとどまっている限り、同盟国が安寧な状態をすぐに取り戻すことはできそうにない。


  • (1) Anders Fogh Rasmussen, « A new way to lead the free world », The Wall Street Journal, New York, 16 décembre 2020.

  • (2) Michael R. Pompeo, « The Chinese Communist Party on the American campus », discours au Georgia Institute of Technology, Atlanta, 9 décembre 2020.


  • [訳注]「北京バイデン」というスローガンは、SNSや落書きなどで拡散されたほか、その言葉をあしらったノートやTシャツなどが販売されている。


(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2021年1月号より)