活発な政治活動を行う韓国福音教会 



カン 仁哲 インチョル (Kang In-Cheol)

韓神大学教授
著書にProtestantisme coréen et anticommunisme, Jungsim, Séoul,2007
(「韓国のプロテスタントと反共産主義」、未邦訳)がある。

訳:村上好古 


 韓国では無宗教者が国民の過半を占める中、プロテスタントが朝鮮戦争期、さらに1960年代からの産業化進展期以降、勢力を伸ばしてきた(2015年には人口の約2割)。2000年代以降は保守化傾向を強めるとともに政治活動を積極化し、反共、親米、北朝鮮との敵対を基本理念に、「霊的戦争」論に裏付けられて反イスラム、反同性愛、移民・難民を拒否するなど攻撃的な姿勢を鮮明にしている。近年は、米朝接近を受けて、その政治的行動には戸惑いが窺われるとともに先鋭化しているようにも見受けられる。[日本語版編集部]

(仏語版2020年9月号より)


Anca Stefanescu. — « Caelestis » (Céleste), de la série « Homo Deus », 2020
www.ancastefanescu.com


 2020年春、COVID-19の大流行が韓国に広がろうとしているおりに、保守福音主義者たちは、政府の辞職を求めて毎日の集会を続行し、宗教祭典を中止してオンラインでの儀礼に移行することを拒否した。仏教徒やカトリック教徒とは異なり、彼らはこの禁止措置が宗教の自由に対する侵害に当たると受け止めた。なかんずくこれを機に、(ウィルスの震源地である)「社会主義中国に従属している」と非難されている文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対する攻撃に乗り出したのだが、そこには失った国民の人気を取り戻す意図もあった。

 実は2016年秋に、韓国社会はふたつの陣営に分かれている。ロウソクを手に朴槿恵(パク・クネ)大統領の罷免を求める集会を開くデモ参加者がいる一方で、それに反対する者は韓国国旗の太極旗を振りながらデモを行った。後者は前者に対抗して韓国プロテスタント教会が中心になって起こした運動であったが、対立は「ロウソク革命」派の圧倒的勝利に終わった。この革命には1,700万人の市民が参加し(1)、2017年3月10日に朴大統領の罷免を勝ち取り、法律に即した裁判手続きを経て、同氏の投獄に至った。時を経ず5月には、ロウソクの下で夜を明かす精神を奉ずる文氏が大統領に選ばれた。

 デモ参加者の数は少なかったが、「太極旗集会」は続けられた。しかしながら、平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック(2018年2月)以後の北朝鮮との目覚ましい緊張緩和で、この運動は苦境に陥った。それは、アメリカの保守プロテスタントの支持を拠り所に大統領に選ばれていたドナルド・トランプ氏が、この解氷に決定的な役割を果たしていたからなおさらだった。だがこの運動は、黄教安(ファン・ギョアン)氏が2019年2月に自由韓国党(朴槿恵前大統領が率いたセヌリ党の後継)の党首になってから再び自信を取り戻す。朴氏の下で最後の首相を務めたこの激しい反共主義者とともに、プロテスタント教会は急進右派の原動力へとこの時変質した。だが何たることか! 2020年4月15日の総選挙での自党の敗北後、黄氏は辞任に追い込まれた。

 保守福音主義者は社会問題や政治論議から長らく距離を置いてきた。しかし30年前、政治問題に乗り出すよりも前に、社会問題に関与し始めた。

 20世紀初め以来、無宗教者が極めて高い割合(人口の半数以上)を占める中で、韓国社会では宗教間の熾烈な競争がある。日本の占領から解放された1945年には、10万人のプロテスタントがいたが、人口の0.5%に過ぎなかった。しかし1950年代、とくに朝鮮戦争(1950年~1953年)の期間中その数は急速に増加し、国内では仏教徒に次ぐ2番目の宗教勢力となるに至った。大韓民国統計庁によれば、2015年には967万6,000人、人口の19.7%を占めている。無宗教者の割合の方は、1995年の49.6%から2005年に46.9%になり、その後2015年には56.1%へと上昇した。韓国のプロテスタント教会は現在、テレビ放送6局、大学109校、初等中等学校631校、医療機関196を擁している。教団の数は259になる(2)

 信者は国会にも進出し、プロテスタントの議員の数はこの20年間、31%から41%の間を上下している。また、韓国プロテスタント教会は国際社会でますます目立つ存在になっている。1980年代以降伝道師が世界に派遣され、その数はアメリカの伝道師とともに今や最高の数に達し、2009年には2万人だったものが、10年後には3万人になっている。1990年代初頭には、信者の数で世界の上位50のプロテスタント教会のうち、半分近くが韓国教会だった。

 植民地時代(1905年~1945年)、アメリカの伝道師の影響で大部分のプロテスタントは保守派になり、さらに原理主義者になった。1950年代になると、一連の分断が起こった。神学上の保守主義は政治的な保守主義と、神学上の進歩主義は政治上の進歩主義と結びついたが、この過程の終盤、1970年代初めには、進歩派がプロテスタント全体の20%近くを占めた(3)。彼らは、民主主義運動の推進と独裁政権打倒を目指し韓国キリスト教教会協議会(NCCK)に合流した。彼らのこの積極的行動主義のせいで、1980年代の終わりまでのプロテスタントの支配的なイメージは、どちらかと言うと進歩的なものだった。一部の福音主義者が社会運動に参画して行ったこともまた、こうした印象を強めた。

 しかしながら1989年末に保守プロテスタントは、それまでばらばらだったが、韓国キリスト教総連合会(CKK)のもとに結集した。世俗世界との分離という従前の教義を放棄した末のことだったが、当初からCCKは、NCCK を信者数でも資金面でもはっきりと凌いでいた。その結果1990年代の半ば、NCCKが財政的困難に陥っていたのを機に支配権を握り、次いで精神面でも圧倒した。2000年代初め以降、プロテスタント教会は[全体として]保守的になったが、政治の舞台からは離れていた(2020年7月時点では、NCCKの9教会に対しCCKは55教会を擁している)。

 それが2003年1月[前年12月に廬武鉉(ノ・ムヒョン)氏が大統領に選ばれ、この年2月に就任]、CCKによって指導された勢力がソウル市役所前の広場で、信者数万人が参加したふたつの祈りの集会を開いた。次いで3月初めには右派グループと共同して10万人以上が参加する集会を開催した。政界への華々しいデビューであり、反動的な政党と社会組織はこぞって熱狂的にこれを称えた。

反共、親米、そして北朝鮮への敵意 

 右派の一部の活動家はプロテスタントの政党を作り、一部はニューライト運動[新保守主義を唱える各種団体が結集したもの]を起こした。2003年から2008年の5年間で彼らは大きな成功を収めた。野党の立場を明確にし、その前任者[金大中(キム・デジュン)氏]と同様に「北朝鮮寄りの極左主義者」と評された廬武鉉氏の民主党政権(2003年~2008年)のほとんどの主要な改革を阻んだ。激しい選挙戦の末ソウルのメガチャーチ(信者2,000人以上)長老の李明博(イ・ミョンバク)氏を大統領に選出(2008年~2013年)するのに貢献し、保守主義の時代へと道を開いた。2010年代にはいくつもの極右プロテスタントの非政府組織(NGO)が誕生した。これらの組織は主に若者によって構成され、彼らは勇敢な「インターネット上の戦士」になるべく教育された。韓国の福音教会は、実際のところ戦闘的なまでのその熱烈さと攻撃的性格で際立っている。一部の者は政治工作にも加わり、密かに国の諜報機関の支援を受けたり、殊に選挙の際は偽情報をねつ造し流布させたりしている。

 彼らの政治路線は、いたって単純だ。反共産主義、親米、北朝鮮への敵対、という体勢を保持・強化すること、性的マイノリティ、イスラム教徒、良心的兵役忌避者、移民・難民の権利を保証する法律、命令、政策の採用を阻むこと、選挙の期日には特に、彼らが支持する体制に都合の好い政治的な流れを作ること、学校や社会保護機関の運営また聖職者への税制に関し、教会の利益を守り促進すること……。

 反共産主義は1930年代以来韓国プロテスタンティズムの社会的な教理の一端をなしていたが、その右派は2013年に、「北朝鮮シンパの左翼同性愛者」という敵役を作り出した。これは、多くの性的マイノリティが左翼出身であり、また左翼は彼らの考え方に同調しているという見方に立ったものだった。2017年の7、8月にアフガニスタンで23人のプロテスタント伝道師が誘拐されそのうちの2人が殺害されると、もうひとつの陰謀説が生まれた。イスラム教徒と「極左主義者」――中道派による政府、あるいは右派以外の者のことを指している――との連合による「韓国のイスラム化」という説だ。しかしイスラム教徒は韓国の人口5,100万人余のうち15万人にとどまる極めて弱小勢力でしかなく、社会におけるイスラムの影響力を問題にしたものではない。そうではなくてこの主張は、韓国プロテスタントのメシア(救世主)思想につながっている。

 しかし、だからといってこれで北朝鮮に対するこだわりが重きを失うことにはならなかった。1990年代半ば以降、右派プロテスタントは「福音主義によって北朝鮮を征服する」ための準備を進めており、北朝鮮の体制が崩壊した時――それが彼らが最も期待していることなのだが――には、10年で1万以上の教会をつくるという目標を持っている。伝道師たちが中国と北朝鮮の国境地帯に派遣され、また脱北者の一団が右派プロテスタントによるパルチザンの支援を受けて、国境近くで、北朝鮮の体制を批判する情宣ビラを積んだ大きな風船を飛ばすといったことも少なからず行われている。

 軍国主義にも近いこの戦闘的な姿勢は様々な宗教的な動因に拠っているが、その多くは特に1990年代と2000年代にアメリカ保守プロテスタント教会によって伝えられたものだ。これは世界を「自分たち」と「テロリスト」に2分する見方であり、前千年王国思想――救世主が地上に再臨し、悪魔(サタン)を打ちのめしたあと1000年統治することを明言するという教義――に基づいた終末論を信ずる霊的な闘いの理念である。反キリストの出現とその世界支配、すなわち善と悪との最終決戦を予言することで、信者に神の戦士としてのアイデンティティを与える方法なのだ(4)

 同様に、ユダヤ人がエルサレムに戻ることは終末の徴と考えられている。2017年以降、韓国の右派の集会の際、太極旗、あるいはしばしば星条旗の隣でイスラエルの国旗がはためいているのはこのためである。何年か前にはまだ、牧師が英語で祈りを唱え、北朝鮮の体制打破に力を尽くすアメリカの大統領への感謝のメッセージを述べるといった光景がまれでなかった。2003年4月には、これらの祈りに応えて、在韓アメリカ軍トップのレオン・J・ラポート司令官が、汝矣島(ヨイド)純福音教会の創立者であり韓国右派プロテスタントの最も有力な指導者である趙鏞基(チョー・ヨンギ)牧師を訪ねた。同年8月にはジョージ・W・ブッシュ大統領が、CCKにあてた書簡で、「ソウルで行われる大祈祷集会での韓国とアメリカとの友好の精神」を称えた(5)

 韓国の福音教徒にとってアメリカは、人々に福音を説き文明化した「信仰の祖国」であり(1893年から1983年までの間に韓国に来た宣教師のうち87%以上はアメリカ人であった)、彼らの国を救ってくれたし――それだけでも礼賛と感謝に値する――、世界の救世主でもある。したがって彼らを手本にし、是が非でも緊密な協力関係を維持することが重要になる。アメリカとの階層的な上下関係をつくり上げた宗教的かつ植民地的な心理からは、アメリカ人は「選ばれた民」なのだ。逆に、アメリカの右派プロテスタントにとっては、韓国のプロテスタンティズムは重要な意味を持っていない。

 この不均衡は両者の関係の強まりにとって妨げにはならない。今やアメリカには4,000以上の韓国プロテスタント教会があり、実際上、教義の同質性を保証している。相互の訪問や会談がしばしば行われ、アメリカの保守系神学校の卒業生は、韓国の大きな教会や右派宗立学校の牧師や教授など枢要なポストを占めている。アメリカ式の考え方で経験を積んだこうした人材を通じ、原理主義、前千年王国的な終末論、霊的戦闘といった神学が広がっているのだ。アメリカと韓国の福音主義が双子のように似ているのは驚くに及ばない。選挙への強力な協力、右派政治勢力との同盟関係、反共産主義、同性愛者に対する差別、難民や移民の拒絶、親イスラエルで反イスラムの立場、など。西洋諸国の他の教会と異なり死刑を支持していることも忘れてはならない。

 一方で、韓国の右派プロテスタントが太平洋の向こう側のプロテスタントほどには問題にせず関心も持たない政治課題もいくつもある。中絶の権利、胚性幹細胞(ES細胞)株についての研究、薬物、ポルノ、女性解放運動、などだ。「創造説」[生物の種はすべて聖書が言う天地創造に際して作られ、今日に至るまで変化していないとする説]を教育することや、公立学校での祈祷についての議論には関与しない。アメリカの活動家は9.11テロ後のイスラムとの戦いを特別視するが、韓国では、北朝鮮との敵対関係で頭がいっぱいである。

 2019年6月30日の板門店での文大統領、金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮指導者、トランプ大統領の歴史的な会談[訳注]がそれぞれの体制内で一定の困惑をもたらしたことは理解できる。韓国右派プロテスタントは確かにこの積極姿勢に敬意を表しはしたが、ただちに、彼らが呼ぶところの「北朝鮮のまやかしの和平提案」への警戒を呼びかけた。中道左派の新聞であるハンギョレの朴贊洙(パク・チャンス)論説委員はこう書いている。「北朝鮮との会談ではトランプが北朝鮮をこらしめるだろうと期待していただけに、保守陣営にとって大きな裏切りと見えた」(6)。彼は、右派プロテスタントが、アメリカに従属するのではない政治方針を明確に設定するよう極右の一部知識人が保守主義者に呼びかけているのに倣って、トランプ大統領にもアメリカの右派プロテスタントにも依存しない教理を選択しようとするのではないか、と自問しているのだ。

 もっとも当面、板門店での会談は写真を撮ることだけのためのものにとどまっている――トランプ大統領の選挙活動には良い影響だ。つまり、アメリカと北朝鮮との関係にも、また南北朝鮮間の関係においてすら、特筆すべき何の進展ももたらしていない。半島を包み込んだ興奮と期待感は少しずつ薄れて行っており、これは韓国右派プロテスタントにとっては好ましいことだった。彼らがトランプ大統領に対して感じた裏切りの感情は、薄らいできている。CCK会長の全光焄(チョン・グァンフン)牧師は、2019年10月、文大統領の退陣をねらった汎国民闘争運動を始め、大統領府青瓦台の前にテントを張り、「砂漠の中の主の集会」と銘打った数千人規模の集会を定期的に開催するようになった。しかしながらCOVID-19 の集団感染が数度に及び、こうした示威行動に対し世論は徐々に批判的になっていった。ソウル市当局はこの機をとらえ、彼らの占拠を排除した。牧師は、2020年4月に逮捕そして保釈という目にあったが、諦めず、右派勢力とともに、この10年間で敵と特定した3つの集団に対する思想上の聖戦を再開した。つまり、左翼の政党と組織、他の宗教全てを含む異端者、それに同性愛者だ。

平和についての全ての合意を突き崩すために飛ばされる情宣用の風船 

 4月の総選挙での敗北後、右派福音主義者は、北朝鮮に対する情宣用風船キャンペーンを再開した。そこには、トランプ大統領とアメリカの保守主義者が北朝鮮との交渉に何らの意欲も見せないだけに、一層熱い意思があった。2020年6月には、韓国に居る脱北者の組織である「自由北韓運動連合」(Fighters for a Free North Korea)や、プロテスタントの集団である「殉教者の声」(Voice of the Martyrs Korea’s)などが、世論はこの種の挑発行動に極めて批判的であるにもかかわらず、国境の反対側から情宣用のビラを飛ばした。こうしたキャンペーンに激怒した北朝鮮は、これを理由に、南北朝鮮の指導者が板門店で会談したあと2018年9月に設けられた南北共同連絡事務所を破壊した(7)

 右派プロテスタントは、これらの攻撃的な活動が単に彼らの教義に合致しているというだけでなく、自分たちの政治的な影響力と存在感を保つのにも役立つと考えているようだ。しかしながら、彼らの社会的な孤立を深めることにしかならないこうした憎しみの政策が、すべての韓国プロテスタント教会の将来を暗くしているということは明らかなように思われる。


  • (1) Lire Sung Il-kwon, «« Révolution des bougies » à Séoul », Le Monde diplomatique, janvier 2017. 

  • (2) « La religion en Corée — 2018 », rapport du ministère de la culture, des sports et du tourisme (en coréen), Séoul, 2018.

  • (3) Résistance et reddition : régimes militaires et religion (en coréen), Hanshin University Press, Osan, 2013. 

  • (4) Lire Ibrahim Warde, « « Il ne peut y avoir de paix avant l’avènement du Messie » », Le Monde diplomatique, septembre 2002. 

  • (5) CCKホームページ上の公開書簡、2003年。

  • (6) Park Chan-soo, « Du conservatisme proaméricain au conservatisme projaponais » (en coréen), Hankyoreh, Séoul, 11 juillet 2019.[日本語版あり。本文中の翻訳は、日本語版での表現を参考にして行った。] 

  • (7) マルティーヌ・ビュラール&スン・イル=クォン「韓国、文在寅大統領の太陽政策」(ル・モンド・ディプロマティーク日本語版2018年9月号)参照 


  • [訳注] 会談自体は米朝間で行われたが、会談場である「自由の家」への案内には文大統領が同行した。


(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2020年9月号より)