NATOの前途


セルジュ・アリミ(Serge Halimi)

ル・モンド・ディプロマティーク統括編集長

(仏語版11月号論説)

訳:土田 修



 英国が欧州共同市場に加盟し、欧州連合(EU)のとどまることのない拡大に道を開いて以来、EUはその名に値する外交政策を見つけ出すことができなかった。時にはその名に値する以上の政策もあるにはあったがきわめて稀なことだった。言葉数の多い譲歩は主張とはいえないし、慎重であることは力にはならない。EUの多くの加盟国は米国の帝国主義的な冒険に参加した(加盟16カ国がイラク戦争に加担している)。EUは中南米に対する米国の干渉主義に付き合ってきた(米国に倣ってベネズエラの野党を合法的な政府として承認するという愚かなことをした)。EUはトランプ政権の気まぐれに反対するふりをしたが、米国が(イランと商取引する企業は経済制裁を加えると)脅すとすぐに米国にすり寄った。EUは拡大前には中東に対してより大きな影響力を保持してきた。英国が欧州大陸に対する米国のトロイの木馬になると考えたシャルル・ドゴールは、欧州共同市場への英国の加盟に反対した。だが、米国がブレグジットを恐れる理由は何もない。というのも、年数がたつにつれてEUは米国の〝臣下〟になりはてたからだ。

 米国による支配は、防衛面に関してはより屈辱的なものだ。冷戦時代に設立された北大西洋条約機構(NATO)は米国支配の道具でしかない。ホワイトハウスが承認しさえすれば、同盟国が他国を占領(トルコが45年前からキプロスの一部を占領している)したり、隣国を「緩衝地帯」として扱っても問題ない。たとえば、兵員数でNATO第2の軍事力を持つトルコはクルド人自治区を抹殺するためシリア北部に侵攻した。だが、米政府はエルドアン体制がロシアとの海上国境の1つを監視し、武器の60%を米国から買い、米国の核弾頭を受け入れ続ける限り、文句は言わない。米国の操り人形で「ノルウェーのトニー•ブレア」といういかにもの異名を取るイェンス•ストルテンベルグNATO事務総長もなんとも思ってはいない。というのも彼にとってトルコは「他の同盟国と連携し、自制した行動を取っており、共通の敵であるイスラム国(IS)に対する利益を守っている」からだ。

 2003年に[大量破壊兵器があったとする]虚偽の理由で米国がイラク侵略を開始した際、NATOはその従順な仲介役を果たしたが、現在の中東はその米国によってカオス的状況に陥っている。勢いに乗じた米国は他のNATO加盟国とともにリビアで戦争を開始し、さらに2015年7月にはイラン核合意から、今度は単独で離脱した(イラン核合意の締結はこの10年間で、米国が下した数少ない賢明な判断の一つだった)。今年10月には現地に駐在するNATOの欧州「同盟軍」になんの相談もなく、クルド人をトルコ軍のなすがままにしたが、その際、トランプ大統領は驚くほどざっくばらんな内容をツイートした。「クルド人たちはうまく切り抜けてほしいものだ。われわれは11000キロ離れたところにいるのだ!」。自分の関心しか頭にない気まぐれな〝王様〟に付き合い続けるのは、保護国の地位を受け入れることと同じだ。欧州がそこから抜け出すにはNATOから脱退するしかない(1)



(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2019年11月号より)