アガデスの罠にかかった移民たち

民兵のパラダイス


レミ・カラヨル(Rémi Carayol)

ジャーナリスト

(仏語版2019年6月号より)

訳:福井睦美



 「今はもう移民は見かけなくなりました。でも彼らは今も存在していますよ」。「オルタナティブ市民スペース協会」の事務所で、アガデス地区コーディネーターのナナ・エコイエさんは移民の輸送を違法化した2015-36法の影響を嘆く。(「アガデスの罠に落ちた移民たち」参照)「彼らはもともと暴力の被害を受けていましたが、今や手配業者の簡単な餌食になってしまっています。書類を取り上げられたり、腐った食べ物を与えられたり、不潔なところに寝泊まりさせられたり、女性は性的暴行を受けたりしています。移民が隠れて行動するようになり、誰にも訴えることができなくなったことで、彼らは一層弱い立場に落ちてしまったのです。しかも、費用も暴騰しました」。リビアに到達するための費用は、法律が施行される前は15万CFAフラン(230ユーロ)だったものが施行後には50万CFAフラン(763ユーロ)にまで跳ね上がった。

 移民たちは見つからないように居場所を転々と変えなければならない。北に出発するまでのアガデスでの待ち時間は2~3日だったのが、今は2~3カ月に及ぶこともあり、気候のせいで消化器官や呼吸器官の病気になりやすくなっている。病気になっても、診療所へいくこともできない。セネガル人で24歳のイブラヒマ・F氏はアガデスの「ゲットー」(宿泊施設)で死にそうな目に遭ったことを話してくれた。「たくさんの人がいて、とても窮屈なところでした。食べ物もあまりありませんでした。そんなところで私は病気になってしまったんです。救ってくれたのは赤十字です」。2017年のことだ。彼はリビアに到達できたが、そこで民兵につかまり拷問を受けた後、なんとか逃げだせたという。

 2015-36法のもう一つの直接的な影響は、政情不安なマリ(1)を通過し、アルジェリア、モロッコ、スペインへと移動する移民が増えていることだ。この経路では、手配業者はより組織化されていて、迂回路を選んでいる。「つまり、彼らは(砂漠の)途中で水の補給ができるかもわからないまま出発するのです」と国際移住機関(IOM)の幹部は強調する。

 手配業者の力は強大になった。ヨーロッパ到達に成功したマリ人のユソフ・N氏はディルクへの道で砂漠の真ん中に置き去りにされた話をしてくれた。「業者は我々に別の車がピックアップにきてくれると言いました。が、そんな車は来なかった。結局別の人に助けてもらって、10日もかかって国境にたどり着きました」。リビアにつくと、彼のグループはアラブ人の民兵に恐喝された。「金のあるものは旅を続けることができました。私はもう何も持っていなかったので、セブハ村の家に連れていかれ、人道支援の女性が助け出してくれるまでそこで10カ月も監禁されていたんです」

 IOMが提供している数字は部分的ではあるが状況の変化を物語っている。2016年、IOMはニジェールの砂漠で遭難していた移民147人を救助した。それが2018年には9419人、そして2019年1月のたった1カ月間で1145人⋯⋯。アルジェリアとリビアへのルートで命を落とした人は2015年に71人だったのが、2017年には427人に増えた。それも、遺体が見つかった数だけの話で、エコイエさんも「きっともっとたくさんの人が亡くなっているはず」と言っている。



  • (1) Lire « Au Mali, la guerre n’a rien réglé », Le Monde diplomatique, juillet 2018.

(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2019年6月号より)