社会信用システムによる市民の採点

良い中国人と悪い中国人


ルネ・ラファエル(René Raphaël)

ジャーナリスト

リン・シー(Ling Xi)

ジャーナリスト


訳:村松恭平


 「社会信用」と呼ばれる個人の評価システムが中国で広がっている。公的なシステムもあれば、民間のシステムもある。様々な規模と形で展開するこの「社会信用」は、もともとはアメリカのシステム——債務返済を行う借り手を評価するためのもの——を模倣していた。しかし、中国ではその後、他の様々な行動にも拡大・適用されていった。アリババ社のある杭州市および山東省の農村部におけるルポルタージュ。[日本語版編集部]

(仏語版2019年1月号より)

« Mountain River, Landscape Series No 1 » (Torrent, de la série Paysage no 1), 2006-2007 (détail)
Galerie Michael Schultz, Berlin


 浙江省、上海の南に位置する杭州市の第一人民病院の側面入口付近で、その場面は私たちの目の前で展開した。通りは静かだった。膝ほどの高さの小さな柵で車道と隔てられた歩道に、一人の年配の女性が長い間立っていた。タクシーを待っているかのように見えた。車を減速させるための小さなこぶが並び、私たちが目にしたドイツセダンのように、どの車も徐行していた。すると突然、その女性が柵をまたぎ、歩道から車道に侵入し、車のボンネットに身体をぶつけ、子ヤギのように飛び跳ねた。それから女性は腕を組んで地面に座った。車から若い運転手が出てきて、苛々しながら彼女のほうに近づき、1時間の議論がそのあとに続いた。困った様子の看護師たちや、通りがかりの警察官もいた。議論は補償金の交渉に及んだ。

 この場面は「当たり屋(碰瓷)」——文字通り「磁器に当たる」——すなわち、事故に見せかけた揺すりの企てだ。「当たり屋」は中国で非常に広がったため、時に滑稽で、多くの場合、悲惨な映像がインターネット上の動画プラットフォームに溢れている。このような行為や、さらには保健衛生や食料品をめぐるスキャンダルおよび偽造など数々の悪行に直面し、人々の怒りが高まっている。その結果、詐欺師たちの撲滅を約束するあらゆる手段が人々の間で人気を博している。こうして、「社会信用」と呼ばれる監視システムが静かに広まっている。さらに昨年の夏以降は、「诚(誠実)」と「信(信用)」という言葉がプロパガンダポスター上で溢れている。それらのポスターには、個人、役人、企業、様々な職業部門を評価するための一連の公的および民間のメカニズムが説明されており、善人には褒賞、悪人には罰を与えている。

 北京人の研究者リン・ジュンユエは、「社会信用」システムの理論家の一人だ。1999年、彼は当時首相を務めていた朱鎔基(しゅようき)氏に依頼されて作業チームに加わった。朱首相は彼をチーフエンジニアに指名した。リン氏は私たちに次のように説明した。「アメリカ企業は、彼らが発注したい中国企業のことをもっと詳しく知るためのツールを作ってほしいと朱首相に依頼しました。そうして、私は同僚たちと一緒にアメリカとヨーロッパに調査旅行に出かけました。私たちは、彼らのものよりもっと優れたシステムを作る必要があると理解しました。すなわち、中国の市民および企業の返済能力についての情報を提供するための安定したシステムです。“信用管理をめぐる国家システムの構築に向けて”と題した私たちの報告書は、2つの大会[全国人民代表大会および中国人民政治協商会議]が開催される直前の2000年3月に発表されました(1)。“社会信用”という言葉は2002年に登場しました。“社会保障”と対をなす用語として、ある役人が提示したのです」

 2006年、中央銀行である中国人民銀行は、アメリカのように、「信用スコア」の原理を採用した。そこでは大抵、300(非常に悪い)から850(非常に良い)までの評点が付与された(2)。その後もリン・ジュンユエはみずからの仕事を続けた。「私たちは、たとえば国家安全保障省や電気通信省が発表したさらに豊富な情報を収集することで、広い意味での信用システムを探求しました。このプロジェクトは2012年に国家発展改革委員会に認められ、モデル都市もまた同委員会によって選ばれました」

 この研究者は、西洋で大人気を博しているオーウェル的なテレビシリーズ『ブラックミラー』(3)とのあらゆる容易な比較を拒み、また、“国家による個人の採点”という仮説も否定している(4)。「たとえ私たちが“返済能力の標準的評価”よりも先の段階に進んでいるとしても、言われているような段階にはまだ到達していません。個人あるいは企業に関するあらゆる種類の情報が次第に集められるでしょう。そうして、非の打ち所のない個人や企業は、経済取引の履歴がまったくなくとも新たな基準のおかげで融資を受けられたり、入札に参加できたり、他の多くの新たなチャンスに挑戦できたりするでしょう」

「天網」計画と「鋭眼」計画

 43のモデル市町村が、2020年までこのシステムのテストを実施する。各市町村が一連の独自の基準、文字や数字を使った評価システムを備え、独自のネーミングまで採用している——蘇州市は「プラムの花の社会信用」、廈門市は「ジャスミンの社会信用」といった具合に。ほぼすべての市町村が、ソーシャル・ネットワークやスマートフォン上だけでなく、ますます性能が上がっている監視カメラによって集められたデータを活用している。2020年には、主要都市の公共の場所すべてに顔認識システムを内蔵した監視カメラが備え付けられるだろう——これが「天網」計画だ。田舎では「鋭眼」計画が実施されている。この計画により、農民たちは自分のテレビ受信機やスマートフォンを、村の入口に設置された監視カメラにつなぐことができる。第19回中国共産党大会の前の2017年7月10日から国営テレビで放送されたドキュメンタリーの中で、習近平国家主席は「安心感は国が国民に与えることのできる最高の贈り物だ」と発言していた。その映画では、世界に存在する監視カメラのおよそ半分(42%)が中国にあると紹介されていた。

 リン・ジュンユエは、自分が作った社会信用システムをそれらのモデル市町村がどのように運用しているかを見張っている。「宿遷市では、評価において交通規則の遵守が非常に重視されているようです。栄成市では道徳性と公民精神が注視されています。杭州市では、革新的でネットワークに接続された都市という評判が確立されました。私たちのチームは個人データの保護に取り組みながら、このプロセスをつぶさに観察しています。なぜなら一定の制限が必要だからです。さらに、ISO/TC290というこのテーマに関する国際基準も存在します。ですが、この基準は経済へのブレーキとなります」。そして彼は次のようにまとめた。「2020年にはルールが適用され、罰則と褒賞が考案されるでしょう。システムの基礎が作られ、国はそれを取り入れることができるでしょう」。北京市は2021年を予定している。

 2015年以降、杭州市は2つの評価システムを実施している。1つは市のシステムで、今も初期段階であり、私たちがインタビューすることができた住民誰一人としてその存在を知らなかった。もう1つは広く普及し、当局からの評価も非常に高い民間のシステムである「芝麻信用(セサミ・クレジット)」だ。それを導入したアント・フィナンシャルは、杭州市に本社を置く中国の大手Eコマース企業アリババの金融関連会社だ。この民間の信用システムは、中国で非常に人気が高く市場を独占しているアリペイ(中国語で「支付宝」)という支払い決済アプリのユーザーに対して350から950点までの点数を付与している。良い点数を持つ人々は「特典」が得られ、利益を生む金融商品およびアリペイ上ですぐに融資が受けられるサービス「借唄(Jiebei)」を受けられる。

 シアトルの建築家が設計した「Zスペース」は、4年間で2棟目のアント・フィナンシャルのオフィスだ。この会社は今のところ3,600人「しか」雇っていないが、この大きな建物は8,000人を収容できる。儀仗兵のような体つきの警備員がインカムを耳につけ、通り過ぎていく多くの若手社員を監視している。色とりどりのバミューダパンツを履き、最新のBeatsのヘッドホンをつけた彼らは、電気自転車やスポーツカーに乗って急いで出社している。アリペイはアリババ・グループのドル箱の一つであり、2018年9月にはアクティブユーザーが7億人いると発表していた。その1年前は5億人だった。アリペイの基本的な仕組みは、スキャン用のQRコード(“quick response”を意味する2次元のバーコード)からなる。小銭はもう必要ない。物乞いでさえQRコードを首にかけているのだ。

 アリペイを選択するということは、アント・フィナンシャルに大量の個人情報を集めさせることでもある。たとえばタクシーに乗ってショッピングしたり、小型スーパーで買い物をした時の詳細、医療費や寄付金額。フェイスブックがユーザー同士のやり取りから広告を作り出しているように、芝麻信用もまたアリペイを通して行われる熱狂的な買い物の情報から構築されている。それだけではない。「芝麻信用はユーザーの同意を得て、5つのタイプのデータを集め、分析しています。そうしたデータはアリペイというプラットフォームだけでなく、提携を結んでいる他の大規模なプラットフォームからも収集されています。5つのタイプのデータとは、買い物の取引データ、小口消費者ローンの返済データ、不動産資産と金融商品に関するデータ、個人プロフィール——学歴や趣味といったもの——、他のアリペイユーザーたちに向けて行われた送金データです」とアント・フィナンシャルの広報担当者のレ・シェン氏は私たちに説明した。そしてこう明言した。「芝麻信用は、ユーザーのGPS情報にも、電子メールにも、通話履歴にも関心を持っておりません」

 2015年2月、芝麻信用の技術部長リ・インユンが、中国の経済雑誌「財新」の中で評価計算について説明していた。「たとえば、(オンラインで有料の)ビデオゲームを1日に10時間もプレーする人は怠け者だと考えられるでしょう。一方、おむつを頻繁に購入している人は乳幼児の親だとみなされます。したがって、その人は責任感が人一倍強いでしょう(5)」。それ以降は、このアルゴリズムが一体どんなデータを収集しているかについての情報は、何も聞こえてこない。近年では、芝麻信用の高得点者に関心を抱いているのはもはやアント・フィナンシャルだけではない。企業、さらには領事館もこうした有能な人々を引きつけようとしている。たとえばオンラインの出会い系サービス「百合網(Baihe)」は、最も高い点数を持つ独身者たちを前面に押し出している。大手ホテルチェーンや自転車シェアリングの主要事業者、レンタカー会社は、650点以上のスコアを持つ人々に対して保証金——中国では特に高額——を免除している。そのような人々しか登録することができない、写真・ビデオ・IT関連の機材レンタルのためのプラットフォームもある。芝麻信用の高得点者は、シンガポールやカナダに滞在するためのビザ申請の際にも優遇される。

地方局が放送する、公民精神を欠いた行動特集

 2004年以降、杭州市当局は16歳以上の住民一人一人に「市民カード」を支給している。それは多機能付きの磁気バッジで、社会保険カードや交通系ICカードの代わりとなり、専用の端末機械で交通違反の罰金を支払うこともできる。その磁気バッジがあれば、町にある[有料の]公園にも無料で入場できる。市民カードを導入した当時、当局はこの手段によって住民たちの需要をより良く把握するための大規模なデータベースを作りたいと発表していた。2018年6月からはこの市民カードの所有者は、もし希望するならば、同等のサービスを受けられるスマホアプリに移行することができるが、本人確認をするには芝麻信用に個人情報を提供しなければならない。さらに芝麻信用では顔認証も使用される。こうした技術的操作は、アリババと杭州市当局が繋がっているという明白な証拠を示している。杭州市当局から見れば、高い芝麻信用スコアは、善良な市民であることを保証するものだ。

 2015年には中国国民の4分の1にしか信用スコアを付与できていなかった中国人民銀行は、芝麻信用とその他の7つの金融企業に対し、国民のすべての銀行情報と納税情報へのアクセスを長い間許可していた。「中央銀行は2018年5月についに“百行征信(Baihang)”という独自の信用スコアを開始しました。それらの8社も少数株主として参画しました」とリン・ジュンユエは説明する。

 十分に実用化され、公安力によって完全に監督された市の社会信用システムの重要性を評価するには、さらに北に向かい、山東省の港町である栄成市まで赴かなければならない。「杭州市が自身のブランドイメージを“ハイテク企業”と結びつけて作り上げ、芝麻信用を優遇している一方、栄成市のほうは市民に対する信用スコアの積極的な運用で知られています。この町は住民たちのモラルの向上に注力しています。市当局が多くのインセンティブを用意したことをあなた方は知るでしょう」とリン・ジュンユエは私たちに語った。事実、栄成市では熱意と確信、そして⋯⋯多くのいいかげんな信用基準が混ざり合っている。

 その日の夕暮れ時、市庁舎を取り囲む公園にはほとんど人がいなかった。継ぎ接ぎをしたチュニックを着た老夫婦がその理由を説明してくれた。「“国民生活360”の時間です。多くの人がテレビの前に急いで向かいます」。毎晩、地方局が過去24時間に監視カメラに捉えられた公民精神を欠いた行動特集を放送している。アパートの敷地の鉄柵に引っ掛けられたパンツ、歩道に放棄された古いソファー、さらに悪い行動として、横断歩道で減速しない運転手や、どこでも車道を横切る歩行者たち——非常に速いテンポでこうした場面の映像が連続で流れる。テレプロンプターをじっと見ている感情のない警察官たちが警告を行うシーンと交互に、車のナンバープレートや厄介者の顔、時に名前が晒される。

 ようこそ栄成市へ。この町は漁業、キャンピングトレーラー産業、モンゴルからやって来る白鳥のための冬の保護区で知られている。周囲20kmの範囲にあった村々を吸収合併することで、6年のうちに一つの村が町へと変わった。栄成市とその管区に属する919のほぼすべての村において、2013年には社会信用システムがすでに確立され、人々の行動と社会的相互関係が明らかに変化した。住民たちは最初に1,000点が付与され、自動的にAランクに登録される。点数を集めればA+ランクにアップし、点数が減ればB、C、Dランクへと降格する。1点を失って999点になるだけでBランクに下がり、銀行からの不動産融資が拒否される。住民たちは市役所の真新しい事務所にやって来て、正式なスタンプが押されたスコア証明書を受け取る。

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Galerie Michael Schultz, Berlin

 ごみをポイ捨てすれば、罰として3ポイントが減点されるようになってから、歩道もバスも驚くほど綺麗な状態になった。タバコの吸い殻も空き瓶も見当たらない。また、現行犯で警官に捕まって罰せられる必要もない。Hikivision社——遠隔監視の分野における世界トップ企業であり、中国政府が主要株主となっている——の多くのカメラが警官の代わりに働いているのだ。車道を横切ることはもう危険な行為ではなくなった。幹線道路では、歩行者が近づくと自動車運転手は停車する——中国では非常に稀なことだ。違反をすれば罰則は重い——50元の罰金、運転免許から(12点のうち)3点が引かれ、社会信用は5点引かれる。「こうした状況は、2017年の春に突然やって来ました。車はたちまち私たちの前で停車するようになりました。私はどうしたらいいか分かりませんでした!」とユアン氏は思い出し、強い満州訛りで語った。

 栄成市の多くの地区は良い行いについての規定も作り、住民たちがそれに署名している。たとえば、青山地区では大きな青い看板にマナーが記載されている。重要項目の中には次のようなものがある——(“猥褻”を意味する)「黄色い」映画・本を排除すること、道で野菜を栽培しないこと、登録されていない教会に行かないこと、隣人に対して無礼に振る舞うのをやめること、結婚式や葬式の際に高級車に乗って気取らないこと。それらに違反することは、自らの点数が急落する危険を冒すことを意味する。

 社会信用の影響力は、この町の周辺にある小さな村々ではさらに顕著だ。そのうちの約100の村には「社会信用広場」がすでに存在している。広場では、娯楽風の色鮮やかな看板が様々な義務について細かく記述しており、賞賛に値する市民の顔写真を掲示し、過去1カ月の間に追加された点数、あるいは引かれた点数を明示している。最近になって路地がアスファルト舗装された美しいDongdao Lu Jia村では、2018年7月10日に住民たちが社会的評価について包括的に説明する手引きを受け取った。12ページのその小冊子には次のことが書かれている——隣人の果樹を剪定すればプラス1点、年長者を病院や市場に連れていけばプラス1点(ただし月に2回まで)、溝にはまった車を抜け出させればプラス1点、水道メーターの検針作業を助けたり、自分の道具を貸し出せばプラス0.5点。だが、もし鶏たちをケージに入れていなければ罰金200元とマイナス10点、喧嘩をすれば罰金1,000元とマイナス10点、ごみを川に捨てれば罰金500元とマイナス5点、政府に敵対的だと判断される落書きを描いたり、ステッカーを貼れば罰金1,000元とマイナス50点。最も恐ろしい罰は、村長を通さずに上層階級に誓願書を提出する人たちに襲いかかる(6)——罰金1,000元とBランクへの必然的降格だ。

 ジーンズを履き花柄のシャツを着た、陽気な64歳のリウ・ジアン・イー氏はこう語る。「以前は村から清掃人にお金が支払われていましたが、彼らの働きはよくありませんでした。今は自分たち自身で清掃を行っています。そうすればポイントがもらえるし、節約にもなります」。この農民は国中の建設現場を長い間回り、その後はこの村に戻り、自分が生まれた素朴な石造りの家に住み始めた。「ほらあそこ、隣人の煙突を修理してきたところなんです。もしこのことを我々の党のリーダーに申告し、私の友人が証拠写真を提出してそれを確認すれば、1ポイントがもらえます。スコアは毎月末にWeChatのページ上で公表されますが、私はスマートフォンを持っていません」。高得点者は春節の際にカゴ数杯分の牡蠣と数缶分の油をもらえるだろうと彼は考えている。「先日隣人が私に語ったところでは、障害を持った労働者たちのための作業場を町に建てに行くために、村長が年寄りチームを結成していたということです。誰も資格を持っていませんでした。しかし、いくらかの賄賂によってその計画は通りました。我々にポイントを付与していると考えられているのはその村長です。ふざけたことだと思います!」

 その隣のシム・ジア村では、厚い黒色のシートの裏で朝鮮人参が栽培されている。この村には250人が住み、魚が多く生息する一本の川が流れている。一つ目の小さな家——それに続く家々も同じ外観であり、きらきらと輝くガラス片が壁に貼られている——にはコンクリート屋根の上に赤い大きな十字架が掲げられている。ここはプロテスタント教会であり、週に2回、約20人の信者のために開放されている。短髪でずんぐりした女性が戸口に現れる。エナメル製のプレートが扉の上に釘で留められており、そこにはこう書かれている——「模範的な社会信用の家族」。隣人たちの家でも同様だ。ムー氏は咳払いをしながらこう説明した。「3年前に遡ります。役人たちは理由なく村の東側を表彰しました。翌年は西側でした。彼らはそれぞれに平等な評価を与える必要があったのです。今年はもっとまともな方法です。すべきこととすべきでないことが書かれた小冊子をみなが受け取りました。まるで学校のようです。査定者たちの連絡先がそこには記載されています。私たちの良い行いについて査定者に知らせ、点数を要求するためです」

 公会堂の中庭——そこでは人々が夜明けから数元を賭けてシャンチー(中国のチェス)対決をしている——に掲示された8月の慈善家リストにムー氏の名前は載らなかった。「私は、隣人を助けたことを知らせるために、査定者に連絡する準備がまだできていないのです」。彼女は小さな声でこう言った。「私の友人の夫は借金を返済できませんでした。彼はたった一度だけ月賦払いをしくじり、ブラックリストに載りました。近所に住むみながそのことを知っていました。おそらくそれとは関係ないでしょうが、彼らはその後離婚しました⋯⋯」。ムー氏はドアを閉めた。おそらく彼女は、中国政府がCreditchina.gov.cn.のサイト上で毎月アップデートしている「経済上の違反行為」リストに言及したのだろう。そこに記載されている企業や人々の合計数は分からない。最近の追加分しか表示されないからだ。2018年9月には22万8,000人の個人と5万5,000社が借金の未返済や税金・罰金の未納を理由として、そこに掲載されていた。

 ソーシャルネットワークのウェイボー(微博)上では、違反者たちが公の面前で味わった屈辱だけでなく受けた罰についても書いている——企業に対する入札参加の禁止、高級ホテルの予約禁止、優秀な夜間塾への子どもの登録禁止、一年間の飛行機の搭乗や高速鉄道の乗車禁止。したがって、借金を一度に全額返済してリストから自分の名前を削除してもらうことが優先事項となっている。

 そこから数キロメートル南へ。車がほとんど通らない四車線道路沿いに置かれた巨大な石に、近くにある村が社会信用の先頭に立っていると赤い文字で刻まれている。そのシステム管理者は地元の女性連合会の会長でもある。中国の一人っ子政策の終わりとともに、ユー・ジャンシァ氏の出産管理の仕事はなくなった。2018年5月以降、彼女は3人の査定者によるレポートを分析している。彼らは信頼される村人たちで、良い行いと悪い行いが彼らに知らされる。「毎月18日に彼らが得た情報を集め、20日に私のレポートを村と郡の長に送っています。それから、議論を行って点数を付与するために、25日に集まります。良い行いを認定するには、少なくとも2枚の写真あるいは1本の動画が必要です。それを担当しているのは査定者たちです。この村ではせいぜい50人しかスマートフォンを持っていないからです」。彼女は一度も減点したことがないと主張する——「ある人ががらくたを歩道に放置している時、私はその人の点数を減らす前に片付けるための猶予を3日間与えます。面倒を増やすことが目的ではなく、少しだけマナーを彼らに教え込もうとしているだけです。私たちのスローガンは”好人好事”(立派な人と立派な行い)ですから」

 さらに先に行くと、一列に生い茂った葦の先にマオ・リウ・ジャ村がある。44歳のマー・ユー・リン氏の宅に、夜明けとともに町の人々が数点のポイントをかき集めるためにやって来た。彼女は15年前からカン(kang)——下から温められるコンクリート製のベッド——に横たわって暮らしている。彼女の顎の傍には水筒とリモコンが置いてある。手術がうまくいかず、四肢麻痺に進行していった神経系の病気のせいだ。「1998年に山東テレビが車椅子をプレゼントするために私に会いに来ました。当時、私はまだ歩けました。今ではもう首を動かすことさえできません。とても痛いのです」。したがって、2年前から1カ月に2度、亀裂の入った彼女の家の掃除と家族の世話をしようと、思いやりを持った人々が——毎回違う人であるが——栄成市からやって来る。4点を獲得できる良い行いだ。時々、そうしたボランティアが餃子を差し入れ、彼女の夫がその皿を冷凍庫の奥に入れる。「しかし、それでも私の妻に支給されていたわずかな手当て分——年に3,000元(386ユーロ)——の埋め合わせにはなりません。息子が働ける年齢に達した日に、その手当ては打ち切られました。また、彼女の健康保険は、彼女が多く使用するおむつや包帯、消毒剤の費用をカバーしていません。これらで年に6,000元かかります」と彼は一杯の安酒を差し出しながら思いを巡らした。マー・ユー・リン氏が語った。「小型トラックに乗って郡の病院に行き、看護師に私の尿道カテーテルを交換してもらう目的以外、村からは決して出ません。来客をお迎えし、化粧してもらい、町の女性たちと話すことは多くの喜びです。彼女たちが点数を得るためにそうしているとしても、私にとってはどうでもいいのです」

 山東省のこの地域では、村の数と同じだけの社会信用システムが存在しているようだ。たとえばテン・ジァ村では金曜日の夜に、悪い点数とその人の名前が拡声器で告げられる。これは住民の爪弾きであり、彼らに係争を解決することや、監視人となった査定者から逃れるために隣の村で酒を飲むことを促している。

 イエール大学の研究者で中国の法律の専門家、そして“China Law Translate”というブログの執筆者であるジェレミー・ドームは、中国の社会信用に関するあらゆる法規を翻訳し、まとめている(7)。途方もない作業だ。「レストランに入る時、そのレストランのキッチンの清潔さについて食品安全機関が発表した評価を事前に知ることができます。そこのシェフが自分の祖母を市場に4回連れて行っていることや、無賃乗車したことなどは知る必要はありません。それは、銀行家が顧客への融資を決定する前に、たとえ情報を得ることができるとしても、その顧客が家庭ごみを分別しない人であるかどうかを知りたいとはいささかも思わないのと同じです」。そして皮肉を込めてこう明言した。「おそらくはいつか、データの詳細な分析により、無賃乗車が保健規則に違反する傾向を生み出すこと、あるいは、環境汚染をする人はたいてい借金の返済もしないということが証明されるでしょう。ですが今のところは、総合評価は政府にとって何の意味もなしていないようです。私が思うに、もっとも重要なのはブラックリストと、そのリストによってもたらされる公の場での辱めです」

 輸出入、建設、鉄道・航空輸送、統計、法律・公証専門コンサルタント、イベント企画や広告、相互保険、知的財産保護、ウェディングプランニングに携わる企業や経営者たちのために、良い要素と悪い要素を区別するための特別なリストが今では登場している。しかし、市民にとっては、方法の不透明性——アメリカの巨大ウェブ企業のそれにも劣らない——が社会信用を、悪夢に変えるかもしれない。



  • (1) 全国人民代表大会と中国人民政治協商会議が1年に1回、3月に別々に開催される。
  • (2) Lire Maxime Robin, « Aux Etats-Unis, l’art de rançonner les pauvres », Le Monde diplomatique, septembre 2015.
  • (3) Lire Thibault Henneton, « Science et prescience de “Black Mirror” », dans « Écrans et imaginaires », Manière de voir, n° 154, août-septembre 2017.
  • (4) Cf. Jamie Horsley, « China’s Orwellian social credit score isn’t real », Foreign Policy, Washington, DC, 16 novembre 2018.
  • (5) Cité par Celia Hatton, « China “social credit” : Beijing sets up huge system », BBC News, Pékin, 26 octobre 2015.
  • (6) 中国では、古くからの伝統のおかげで、要求や抗議を村から郡、県、州のように上層階級に届けに行くことができる。Lire Isabelle Thireau, « Les cahiers de doléances du peuple chinois », Le Monde diplomatique, septembre 2010.
  • (7) « Legal documents related to the social credit system », China Law Translate.

(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2019年1月号より)