ネットフリックスの儲け方


ティボー・エネトン(Thibault Henneton)

ジャーナリスト、本紙ウェブ担当者

訳:川端聡子


 1997年に設立されたネットフリックス社は、小さな宅配レンタルDVD会社だった。現在では、190カ国に1億3900万人の契約者を有するネット動画配信プラットフォームとなり、無制限の視聴が可能で広告なし、個人の好みに合わせて作品を提供するサービスを行っている。いまや「すべての動画はネットフリックスに通ず」、だが、いかにして彼らは事業を拡大してきたのか。各映画祭での受賞や、昨年から続くカンヌ映画祭との対立など、映画業界にも影響をおよぼしつつあるネットフリックスの方法論を独自の視点で論じる。[日本語版編集部]

(仏語版2019年2月号より)

Tom Galle et Moises Sanabria. — « Smoke Macbook » (Fumée MacBook), 2017 

 それはテクノロジーの快挙から始まった。何よりもまず重要なのは違法なダウンロード・サイトを凌駕することだったのだ。脅威的な柔軟性をもつインターフェイスによってネットフリックス社が構想したのは、インターネット・サイトというよりもゲーム配信のプラットフォームのようなものだった。いつ、どこにいても動画をスムーズに再生できる「ストリーミング方式」は、激増するユーザーの接続環境に応じて画像の解像度を自動調整してくれる。ネットフリックス社は、アマゾンのクラウド・サービス[AWS]を使うことで、中国を除き世界を制覇できた。このAWSから得られる環境は、潜在的な顧客の目を海賊版サイトからネットフリックスへと向けさせるのに不可欠だ。

 固定客をつかむには魅力的なコンテンツが必要だ。2000年代(ゼロ年代)末より、ネットフリックス社はいくつかの大手ハリウッド映画会社に放映権を掛け合い、『フレンズ』『ペーパー・ハウス』といったTVドラマ・シリーズの世界的ブームによって利益を得た。これらのドラマが、同社のコンテンツ・カタログの総時間数および総視聴時間数の約3分の2を占める。だが、会社の設立当初からマニアックな層もターゲットとしていた。フランス人映画配給業者のヴァンサン・マラヴァル氏は、同社との当時のやりとりについて次のように語る。「担当者がやってきて『イラン映画で何を持ってる?』と聞くので、『あの作品も面白いし、こっちもいいよ』と答えると、彼らは『いや、そうじゃなくて。30作品あるの? なら全部もらうよ!(1)』と言うんだ」。この頃から、ネットフリックス社は借金をしたり突如料金を値上げしたりして、コンテンツの権利獲得にどんどんお金をつぎ込んできた。加入者が殺到する限り、同社は投資家の信用を失うことはない。だが、自社の番組カタログのうちで所有権を有するのは8パーセントのみで、NBCユニバーサル、ディズニー、ワーナーメディアだけで20パーセントを所有していることから、ネットフリックス社は大手映画会社から得たコンテンツ使用ライセンスに大きく依存している。そして、これら大手映画会社のうちの一部は、独自の動画配信サービス(SVOD)のためコンテンツの放映権を引き上げてしまう可能性がある。ネットフリックスがオリジナル・コンテンツの充実に、よりいっそう力を入れるのはそのためだ。

 ネットフリックス社は2011年にコンテンツの制作に着手し、2016年には自社スタジオを設立した。この成功は偶然の賜物ではない。というのも、創設者でCEOのリード・ヘイスティングス氏はグーグルを生み出したスタンフォード大学コンピューター・サイエンス学科卒であり、ネット・ユーザーの足跡を最大限に利用する術を心得ていたからだ。ユーザーの行動を観察し、彼らの好みを分類し、彼らにネットフリックスの番組カタログの作品をチェックするよう勧める。要するにアルゴリズムの強化だ。ヘイスティングス氏はフェイスブック社の取締役会メンバーでもある。

 ネットフリックス社は、配信する商品を細かく調整し、サービス加入者をターゲティングするための強力なツールを作り上げた。このおかげで彼らはドイツのコメディ・ドラマがブラジルで爆発的な人気を得ることや、どの回のどの瞬間に視聴者がドラマにハマるのか、どんなテーマあるいはどの俳優に力を注げばいいのかなどについて知ることができる。多国籍企業であるネットフリックスは、ターゲットに定めた国々の言語で、ローカル色のある作品の制作を決定した。知名度のある俳優を起用することで、メディアの注目を引き、これらの地域でサービスを確立することができた。こうして出来上がったのが、麻薬カルテルを描いたドキュメンタリー・タッチのドラマ『ナルコス』で、全編の4分の3がスペイン語だ。2011年にネットフリックスがラテン・アメリカとカリブ海地域に進出した数年後のことである(2)

 オリジナル作品を制作する前は、ネットフリックス社はたとえばメキシコなどの国でオンライン動画配信サービスに関する規制がないのをいいことに、現地で人気の高いコンテンツの権利をラテン・アメリカ地域の大手放送局(テレムンド、テレフェ、RCN)に交渉した。長いシリーズものの「テレノヴェラ[南米を中心に制作・放映される連続ドラマの総称]」がそれで、番組カタログの15~20パーセントにあたる。そこに80パーセントくらいの、誰もが知っていて違法・合法を問わずすでに大量にダウンロードされているハリウッド作品が加わる。初期の契約者たちはアクセス・コードを他の者と共有することができた。阻止するのは簡単なことだったが、ネットフリックスは契約者たちのこうした行動に常に寛容な態度を示した。なぜなら、ネットフリックスの企業イメージにプラスであり、サーバーがサービス加入者以外のもっと広い範囲にまでわたる膨大なデータを記録し、それにより大衆の好みを特定するための分析ができるという意味でもプラスだったからだ。充分に詳細なデータをいったん得ることができれば、ネットフリックスは過度なリスクを負わずして自社制作ドラマを配信できる。こうして2015年にドラマ『ナルコス』が誕生した。

 ネットフリックスは映画の製作も行っている。2018年には、ディズニーとワーナー・ブラザースの合計の2倍よりも多い80本以上もの作品を製作した。そのうちのいくつかは、権威ある映画祭においてさまざまな賞を授与されつつある。2018年9月に開催されたヴェネチア国際映画祭では、アルフォンソ・キュアロン監督『ROMA/ローマ』が金獅子賞に、ジョエル&イーサン・コーエン監督『バスターのバラード』が最優秀脚本賞に輝いた。映画祭で評価されることで、映画業界の新規参入者であるネットフリックスは芸術的な正当性を与えられ、既存の映画会社は不安を感じている。ネットフリックスはイメージ戦略というものを知り尽くしている。なにせ、ハリウッドという既得権益と闘う「メセナ」を自任しているのだから。自国では実現にこぎつけるのに何カ月もかかったであろうプロジェクトに対し、ネットフリックスからは通常すぐ映画作家にOKの返事がある。だが、どのような条件の下で撮影が行われているのかについては、あまり知られていない。その観点からいえば、ネットフリックスは改革者ではない。ネットフリックスが恐れるのは何か。おそらく、それは同社がクリエイターに対してそれほど寛容ではないという事実に視聴者が気づくことかもしれない。あるいは、2018年10月のデンマークで起きたようにクリエイターが自分たちの権利を守るために連携することかもしれない。

 ブラムハウス・プロダクションは、低予算ながら大成功を収めた『パラノーマル・アクティビティ』(オーレン・ペリ監督、2009年)などの作品で知られる映画製作会社だ。同プロダクションのトップの言葉を借りれば、ネットフリックスは才能を吸い上げるマシーンでしかない。言い方を変えれば、彼らは経費を気にせずに多彩なコンテンツを充実させているのだ。口の悪い連中は、ネットフリックスはあらゆるところからうまい汁を吸っている、と言っている。「もし製作会社やプロデューサーがもっと賢明で、気骨があり、オープンだったなら」、キュアロン監督のようなクリエイターがネットフリックス社に助けを求める必要はなかっただろう、とリュミエール研究所の責任者でもあるベルトラン・タヴェルニエ監督は、キュアロン監督を擁護する(2018年10月19日、Première.fr)。さらに、「問題は、キュアロン監督がハリウッドのどの製作会社からもこの映画の企画を断られたことだ。そして、スペイン語の白黒作品で、自伝的で、スター俳優不在の映画への出資をネットフリックスが承諾したということだ」と言い、「もはやアメリカの映画会社はマーベル・コミックものかスーパーヒーローもの、6~11歳くらいの子供向け作品しか作る気がない。もし必要とあれば、私だってネットフリックスに打診するだろう」と付け加える。これに応えるかのように、新作『The Irishman (原題) 』がネットフリックス社から巨額の資金提供を受けるマーティン・スコセッシ監督は次のような意見を表明した。「テクノロジーや状況は利用するべきだ。だが、いちばん重要なことがある。それは映画を撮り続けることだ」(2018年5月9日、France TV Info)

 確かにそうだ。だが少なくともフランスでは、ある程度の多様性を確保するために「映画の二次利用の規制」を含めいくつかのルールが定められている。映画が劇場公開されてからテレビ放映またはネット配信されるまでに設けられる期間は、各テレビ局や配信サービス会社がその作品へ出資した割合に応じて決まるのだ。映画および視聴覚作品の制作により多くの予算を出した所は、より早くその作品をテレビ放映・ネット配信することができる(フランス映画の総製作費30パーセントがテレビ局による)。このルールを再検討するというのは、フランスの映画の資金調達のシステムについて考え直すのに等しい。

 ネットフリックスがフランスに進出する少し前の2014年、当時の文化大臣オレリー・フィリペティ氏からの警告にもかかわらず、ネットフリックス社がフランスのルールに従う様子はほとんどなかった。そして極めて強力なロビー活動を行った後、論争のおかげでまんまと広告費をかけずに宣伝した同社は、徴税が甘く、タックス・ヘイヴン(租税回避地)への中継地でもあるオランダのアムステルダムにヨーロッパ本社を構えた(3)。それから4年後の2018年、同社はほかの会社と同じように付加価値税(TVA)と、国立映画・映像センター(CNC)へ支払う2パーセントのビデオ税を収めている。だが、フランスでの収益税はずっと支払わないですませている。フランスの映画館(チケット料金の1パーセントがCNCに回る)やテレビ局には、映画製作の助成金に貢献するための税金を支払う義務があるのだが、それに対し同社には何の義務もないままだ。

 新たな映画産業内の協定の交渉が2018年12月に行われたが、そのルールに従えばネットフリックス社は少なくとも劇場公開後15カ月までは映画作品の配信を控えなくてはならない。2017年の時点で、ヘイスティングス氏はからかい気味に「10カ月という期間は長すぎる。とはいえ、10日だって長すぎるけど」と語っている。ネットフリックス社はこの協定にサインをしておらず、よって、映画産業界の規制の枠外で事業を広げ続けているが、サービス加入者はそのことを特に気にしていない。一部の利用者たちは、ネットフリックスが文化へのアクセスの「公的な」欠乏に「個人的な」解決をもたらしてくれると考えている。たとえば、マンシュ県在住のある教員はSVODに関する最新情報を毎月更新するポッドキャスト「Netflixers」を作って発信しているが、彼は施設の数について「パリには106平方キロメートル内に1092のスクリーンがある。だが、同じ面積内にノルマンディーにはひとつしかスクリーンがない」と語る。

 だが実際にネットフリックスでどんな作品が提供されているのかといえば、「ル・モンド紙の評論家を熱狂させた1944年以降の名作映画100本」(ル・モンド紙、2018年12月22日)にリストアップされた作品のうち、フランスのネットフリックスで視聴可能なのはたったの3本、米国のネットフリックスでは2本だ。だが、それでもコンテンツの数だけはたくさんそろっている。アメリカでは「コンテンツのカタログに目を通している時間のほうが実際に何かを観る時間よりも多い」というジョークがある。テクノロジーは娯楽のための道具であるのをやめ、あたかもテクノロジー自身が娯楽と化してしまったかのような本末転倒だ。コンテンツの豊富さは、明らかな画一化の傾向にある質の問題を隠してくれはしない。それはシリーズ・ドラマについても同じことがいえる。アメリカのケーブルTV局 Home Box Office(HBO)は、『OZ/オズ』『ザ・ソプラノズ』『THE WIRE/ザ・ワイヤー』『シックス・フィート・アンダー』や、新しいところではニューヨークのポルノ産業の勃興を描いた『DEUCE/ポルノストリート in NY』といった丁寧に作り込んだドラマを制作し、高く評価されているが、ネットフリックスにはそのようなオリジナル・ドラマがない(4)。ネットフリックス社の野心は別なところにある。それは、同社が今年1月17日に出した株主向けの報告書に「われわれの競合相手はHBOよりもフォートナイト(人気の高いテレビゲーム)だ」とあることからもうかがえる。

 ドラマ『DEUCE/ポルノストリート in NY』では、ポルノ・フィルム製作者がいくつか最新型のビデオテープを試すエビソードがあり、1970年代にビデオの各メーカーがしのぎを削った「規格戦争」が描かれる。当時のビデオによる革新は文化的習慣を根底から変え、それによってあらゆる種類の作品が家庭で鑑賞できるようになり、レンタル・ビデオというビジネスが生まれることとなり、映画館は戦々恐々とした。あれから半世紀が経ち、カセットテープは過去の遺物となったが、映画館はいまもある。視聴者の関心を集め、グローバルな市場シェアを獲得するためには、文化産業はいまやデジタル産業と手を組まなくてはならなくなった。顧客を監視するテクノロジーと大衆文化という、ふたつの武器を兼ね備えたネットフリックス社は、強力なライバルであるアマゾンやディズニー、フランスのカナル・プリュスを大きく引き離している。だが、「ストリーミング戦争」はまだ始まったばかりだ。


  • (1) « Des films pour les cinéphiles », entretien avec Vincent Maraval, La Septième Obsession, no 19, Paris, novembre-décembre 2018.

  • (2) Elia Margarita Cornelio-Marí, « Digital delivery in Mexico : A global newcomer stirs the local giants », dans Cory Barker et Myc Wiatrowski (sous la dir. de), The Age of Netflix : Critical Essays on Streaming Media, Digital Delivery and Instant Access, McFarland & Company, Jefferson (Caroline du Nord), 2017.

  • (3) Cf. « Comment Netflix cache ses profits aux îles Caïmans », BFM TV, 3 octobre 2018.

  • (4) Cf. Dominique Pinsolle et Arnaud Rindel, « Comment HBO a inventé la série de qualité », dans « Écrans et imaginaires », Manière de voir, n° 154, août-septembre 2017.


(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2019年2月号より)