離脱方法が膠着し、行き詰るBrexitへの途 

限られてきた英国の選択肢


ポール・メイスン(Paul Mason)

ジャーナリスト
Clear Bright Future: a radical defence of the human being
(May 2019, Allen Lane)が発刊予定

訳:茂木愛一郎


 英国議会はEUからの離脱方法について再交渉を政府に求めて、それを最近過半数で決議したが、これをEUは許容することはできず、事態は袋小路の状態に入っている。保守・労働両党が内部で割れ、政党政治がそして議会の機能が危機にあるが、何より英国そのものが危機にある。[日本語版編集部]

(英語版2019年2月号より)

photo credit : Christoph Scholz « Brexit »

 ある女性が、ロンドンの街路でブラジル人のスケートボーダーたちが「ブラジル語」で話すのをやめさせようとしつこくなじっている。こんな愚かしさを象徴する対立は1月29日のツイッターで一気に広まってしまった。また大手小売スーパーに加えてマクドナルドとKFCのトップ経営者が、もし「合意なき離脱」に至った場合、商品供給の深刻な中断が起こるかも知れないと警告を発している。1月27日には英国政府が「食料や医薬品の欠乏による死者の発生」を回避するため戒厳令導入という危機管理計画をたてていることを認めた。1月29日の夜、英国議会はBrexitの法定には直接関係しない修正動議に対して議決を行った。それは、保守党とアルスター統一党、それに労働党右派から移民の現状に反対する少数の議員が合同で、EUに対し昨年11月の英国政府との合意案に変更を加えることを要求する議案であった。EUの首脳から直ちに発せられた言葉は、期限ぎりぎりになっての再交渉は不可能であることを強調するものだった。

 いまや、英国に敵対的な勢力に書かせたらこうなるだろうと思わせる終幕のシナリオだ。だが、不運なことに、このような筋書きを書いてしまったのは英国国民自身だったのだ(1)

 どうしてここまで現実乖離の極みに来てしまったのだろうか。その理由は、そこにある問題の性質が根源的なだけに、現状の政党システムでは納めきれない数々の論点を抱え、英国の政治支配層がばらばらに分裂してしまったことであり、二世代に亘って英国の市民社会を結び付けていた多くの政治理念が機能しなくなっているからである。

 保守党にとって欧州との関係は慢性的に極度の精神不安を引き起こしてきた問題だった。それは、1980年代のサッチャー内閣を分裂させ、1990年代にはジョン・メイジャーの政権を不安定にし、その後13年間、党を政権から遠ざける結果をもたらした。そしてデイヴィッド・キャメロンを首相の座から引き下ろすことになり、今やメイ政権に入閣して関わったほとんどすべての政治家の信頼性を損なうことになった。

 欧州懐疑主義の根拠は時代によって変わってきている。1970年代の初頭であれば、帝国の時代の日々に対するノスタルジアがまだあった。マーガレット・サッチャーがブルージュで演説した1988年9月の段階になると(2)、それはフランスとドイツによる欧州の政治統合に向けた動きを牽制するというプロジェクトになっていた。一方当時のEEC(欧州経済共同体)に関しては、英国のビジネス界があくなき低賃金競争の先頭を切ることができる経済自由主義の市場として維持しようとするものであった。

 30年経って、ビジネス界自体が変質してきていた。世界が金融を中心に回っていくなかで、製造業がグローバルな展開でなされることは英国においてはこれまでとは別種のビジネスエリートを形作った。それは日産、ホンダ、エアバス、そしてBAEシステムズといった内外上場会社の現地工場を統率する管理者クラス、そしてグローバルな財務管理の利益や非公式だか不正にまみれたオリガーキたちの利益を代弁する財務管理者クラス、そして渉外弁護士や不動産開発業者たちを意味する。

 新自由主義が危機を迎えるさなか、このいわば第2のグループが決定権を握ってきた。その影響力は保守党の内部のみならず、まずはメディアを通じ、そして様々なメディア全域に及んだ。その関係性は次の事実によって象徴されると言えよう。メイ政権の外務大臣になる以前のボリス・ジョンソンに対して、反EUの新聞であるデイリー・テレグラフの所有者たちは年俸25万ポンドを支払って週一回のコラムを書かせていたことである。2008年以降、金権的地位にある者たちは、英国の将来を基本的にビジネス、技術、金融サービスを中国やインドといったエマージングマーケットへの供給国、かつ世界の金融管理者であると構想し始めた。その将来像にとって、欧州に近づき続ける試みは不必要になった。

「勢力範囲をグローバルに」という原則

 ところが、英国の保守党支持者とはエリートの意向を単に集合したものでは決してない。それは、郊外のゴルフ倶楽部のバーや退職生活者で溢れる海浜のリゾートの喫茶室で形成される考え方を統合したものでもある。今世紀の最初の10年間の中ごろから、低賃金で規制の少ない資本主義に対して欧州全体で規制を掛けようとする抑制的な政策に対し反対する心情が表れ始めていたが、ことに移民に対して敵対的であった。

 ゴルフ愛好家や小さな町のワゴン運転手やドバイ在住のヘッジファンドを操る英国人業者をつなぐのは、底流をなす神話、すなわち帝国という神話だけだ。2010年に保守党が政権を奪回したのち、この神話の発展を検討していたところが防衛政策の分野だったのだ。

 突然に、そしてほとんど吟味されることもなく、保守党は政権奪取のその年に「勢力範囲をグローバルに」という原則を打ち出した。すなわち、NATOへの関与に加えて「高強度戦闘作戦最適化戦争遂行師団」と称する部隊を形成しようとする構想であった(3)。軍事参謀たちは、英国が主要輸入国であるならばその防衛はシンガポール海峡に海軍を駐留させることから始めなければならないという考えにとりつかれることになった。

 緊縮財政政策によって兵力が減少している以上、勢力範囲のグローバル化という観念は政治的な思いつきに過ぎないと論者たちは受け止めていた。その本当の意図が顕わになったのは、Brexitの国民投票の際、保守党の右派が打ち出した政治プログラムが発表されてからである。それはジェイコブ・リース=モッグの率いるEuropean Research Group(ERG)の構想であった。

 グローバルな財務に関心の深いエリートの一部、これにはオフショアの組織を経由してオリガーキたちの資金管理を請け負っている者が含まれるが、彼らははっきりとは言っていないが、欧州との繋がりも含めて、英国内から実物経済を捨て去さりたいのだ。そしてEUメンバーとしての活動を通じて造り出されてきたEU体制での勢力行使の記憶をも消し去ろうとしたいのだ。そのエリート集団は、英国の軍隊をもって世界の治安維持にあたらせたいと考えている。とはいえ、19世紀当時のように貧困国に英国に有利な交易条件を押し付けようとするものではない。この構想のなかでは、英国は理念的にも、また実際上もグローバル化の守護者でありたいのだ。

 幻想のひとつの形は「CANZUK」である。これは白人、キリスト教徒によって構成される商業帝国の復活であり、英国のかつての植民者たちが造り上げたカナダ、ニュージーランド、オーストラリアを含む。別の形としては、英国がいわばシンガポールの拡大版になるということである。右派のトランプ支援派にとっては、英国は大国の争いという拡大ゲームにあってアメリカのために栄光ある滑走路[空軍基地]を提供するところとならんとするものなのだ。どれも賢明なものとは思えないが、右派のメディアを使えば、いずれも、姿を変えた帝国主義のイデオロギーとして、国民に売り込むことができるのである。

 その結果は、ネオ帝国主義の幻想が日ごろ保守党に傾斜していた人たちの想念に入り込むことになった。1月のある世論調査で、もしメイ首相の提案が議会で否決されるなら、合意なきBrexitを選ぶという人たちが全体で31%に達し、保守党支持者の場合にはこれが57%に上昇するという結果となった。破滅的な結末を避けるためEU条約第50条の発効を遅らせる動議への賛意を予定している保守党議員は、317人の保守党議員のうち僅かに17人という状態だ。

 もしそこに、このようなダメージを限定できる力をもった、真にリベラルな中道政党があったなら、英国内に立地するビジネスに関わる人たちは、こぞってその政党への支持に切り替えただろう。しかしながら、唯一の替わりになる政党はジェレミー・コービンの労働党だけであった。

労働党の抱えるジレンマ

 EUのメンバーであることへの反対は労働党の内部にあって長い歴史を有していた。1980年代にあっては労働党左派の主流派に代わる経済戦略には、資本取引規制、関税政策、EEC脱退が含まれた。しかしそのことが、コービンがBrexitに熱意のみられない反対表明しかしないことの主たる要因ではない。そうであるよりも、総選挙で労働党が政権を取るためには労働者階級の多い地域で勝たねばならないが、国民投票においてEU離脱を求めた彼らを道義的に無視できないからだ。筆者を含む労働党のキャンペーンを担った人々は2016年の国民投票での運動期間中、戸別訪問の際、国際的な視点をもって欲しいとの説得を行ったが、それは無効なことでしかなかった。2017年の総選挙で多くのEU離脱選択者を労働党に投票させるための説得材料になったのは、コービンは国民投票の結果を尊重するという保障だった。

 Brexitを選んだ有権者を満足させつつ党の方針を進めるという戦略では、2018年11月の段階になると大きな問題をコービン執行部に抱え込ませることになった。なぜならすべての離脱派を満足させるようなBrexitの方法が得られないことがはっきりしてきたからである。保守党が自力でBrexit案を通せないとすると、議会を通せる合意案とは労働党議員の造反組の投票に依存せざるを得なくなる。

 突然に、イングランドの労働党議員の一部にとって、党に属することと選挙区での支持者たちの求めるものとが深刻に対立することになった。これはコービンのとってきた路線そのものに難題を投げかけるものとなった。それは単にイデオロギーの問題だけではなかった。古くからの労働党の考え方、国家を主軸に政策を作ろうとする左派、社会的公正を目指す運動に傾く青年層、これらを統合しなければならない問題であった。

 労働組合グループの委託で人種差別反対を主唱するアクショングループ「Hope not Hate」が行った世論調査分析によれば、有権者は全体で55%が今やEU残留を望みBrexit反対へと意見を変えてきている。またかりに労働党が少数与党の政権を作るとすれば、少なくとも31議席の増加が必要なのだが、この調査分析の予測によれば、もし労働党がBrexit成立支持で即座の総選挙に入った場合、議席は増加でなく減少するとしている。

 この世論調査によれば、労働者階級でもEU残留の意思が強いスコットランドでは7議席のうち5議席を失う。ロンドンや南西部の労働党支持者は、教育程度が高く、若年層も多く、グローバルな視点をもっているが、彼らもコービンを見捨て自由民主党(LibDems)や緑の党(Greens)に向い、最大14議席を失う可能性がある。一方で、仮に労働党がBrexitを支持したとしても、国民投票でBrexitに賛同していた地域でも議席の増加は望めないという。そういう地域ではイングランドのナショナリズム、そして外国人嫌悪が政治のテーマとなっており雇用、賃金、公共サービスといった伝統的テーマは消し飛ばされている。

 労働党にとって問題は、イングランドとウエールズにおいてBrexitへの対処は政権選択においてすっかり(経済用語を使えば)「織り込み済み」と思っていたことである。テリーザ・メイ首相はBrexitをやりきるだろう。労働党はその提案に反対するだろう。そして二大政党制はいろいろあったが再開するだろう。こういう想定をしていたのである。ところがこれが不可能にみえ始めたときに、コービンは相対立する要求に直面したのである。

 この同じ世論調査によると、労働党党員の87%は残留支持派であるが、直近の総選挙で労働党に投票した人であっても残留希望者は65%だというのである。2018年9月段階では、党員は党本部に対し、メイ首相のBrexit交渉に反対し、その代わり関税同盟維持と単一市場との協調を求めて争い、総選挙を行わざるを得ない状況に仕向け、それがうまくいかない場合には2回目の国民投票を支持するという方針をコミットさせた。しかし、12月の終わりになると党が公式にとっている立場に対して、また世論調査が示している事実にもかかわらず、労働党左派と中間派の議員たちが反発を始めたのである。

 教育問題広報担当のアンジェラ・レイナーや党幹事長のイアン・ラベリーなどを含むコービンの議会内チームの個々のメンバーは、二回目の国民投票を行うことは第一回の結果に対する裏切りと受け取られるのではないかと、国民投票の実施に懸念を示した。このことで自信を付けた党内の伝統主義的右派がメイ首相のEUとの合意案に票を投じようともくろむに至った。

 12月にBrexit交渉をめぐる危機が高まると、再度の国民投票問題を巡ってコービン執行部のなかで対立が強まり、両議論を主張するそれぞれの側の陰の内閣のメンバーたちが一時は辞任をちらつかせるまでになった。本来コービンはテリーザ・メイの混乱に乗じてしかるべきであったのだが、彼の人気はその代わり急落下をしてしまった。クリスマス直前のコービンの信認度はこれまでになく低い19%に落ちたのである(4)

 これらの背景から、7人の労働党議員が1月29日保守党とともに、メイ首相の幻の如き再交渉方針を支持する修正案に賛成票を投じ[訳注1]、14人がEU条約第50条に基づき離脱の発効を遅らせるという労働党の基本方針に沿った修正案に反対し[訳注2]、保守党サイドの17人のEU残留派が賛成に回ったにもかかわらず、これを無にする結果に繋がった。

いまではもう、Brexitだけで頭がいっぱいになっている

 英国は次にどこへ行くのかを理解するためには、パブや、学校の校門近くでの人々の会話や、益々感情的になるラジオのトークショーを通じて聞かれる、議会の機能不全によってかきたてられた庶民感情がいかに感覚的なものになっているかを理解しなければならない。

 Brexitが選挙民に切実な問題と受け取られるようになったのは、ようやく2018年11月になってのことである。メイ首相のBrexit交渉がお先真っ暗だと分かったことで、この問題をトップイシューと考える選挙民がそれまでの30%から65%に跳ね上がり、さらに上昇を続けた(5)。メイ首相が1月15日に議会で合意原案を否決された週には、その数字は86%にまでなった。英国国民はBrexitを話題にし始め、ほとんど話題はそれだけ一色になってしまった(6)。同時に英国国民は、何年にも亘って議論されてきた後になって、ついにBrexitが起こるかも知れないこと、内閣が取返しのつかないほど割れていること、にもかかわらず政権にあることを知ったのである。どの政党をも支持しないといった反政治といったムードが増大し始めているようにみえた。

 労働者階級のコミュニティにおいては、もしBrexitがマイナーイシューなら、極右勢力がそれをアジェンダにする力学はほとんど働かない。だが、86%がそれをナンバーワンイシューだと思い、中心にいる政治家がこの問題を扱いそこねたと考えているとしたら、右翼のポピュリズムは大きな機会を得ることになる。そうした事態を招くのではないかという惧れが、労働党国会議員が右派も左派もBrexitの論点で煮え切らない態度をとってきた主たる動機なのだ。

 Brexitに賛成する比率の高い労働者階級のコミュニティで左派は活動的だし目立っているのだが、極右運動に面と向かって論争を仕掛ける意欲もそれを支える備えもない。イングランドのミッドランド地方である活動家から聞いた話では、「労働党に加入する人たちは、自分の地域の産科病棟の閉鎖を止めるためにやって来る。お前らは裏切り者だと叫ぶようなMAGA(Make America Great Again)帽を被ったファシストによって街で追いかけ回される気はない[訳注3]」と言う。

 これは語られていない恐怖と言ってよいが、極右勢力の反乱が両大政党の行動にこのように微妙に影響を及ぼし始めており、右派の一部が脅威だと言い立てていることでもある。だが、それはまだ現実にはなっていないし、運が良ければ、現実化にはいたらないかもしれない。

岐路に立つ左翼

 2月末までにはメイ首相のBrexit条件再交渉の試みが失敗することが分かってくるだろう。食料や医薬品の備蓄が増加し、ポンドや経済活動は急速に低下をみせるだろう。危機的状況のもとで、メイ首相の虚勢もそこまでとなるだろう。もしメイ首相が合意なき離脱というゴールを視野に入れた行動を起こすなら、閣僚全員が内閣に留まることはほとんど考えられない。

 合意なき離脱を止めるためには、内閣はEU条約第50条に戻って取りやめにするかメイ首相自身が辞めるしかない。メイ首相であろうがその後任者であろうが、労働党の票を頼りにBrexitを切り抜けるためには関税同盟と単一市場に関する労働党の提案を丸呑みする選択しかないことになるだろう。それは英国の保守主義を、たぶん数十年に亘って決定的に分裂させることになるだろう。

 短い言葉で表されるあらゆるハッシュタグと怒りと議会での権謀術数の背後にあるのは、支配階級がその存亡を問われる危機である。いまや英国は国内での産業活動に少しの実質的な関心をもたないようなスーパーリッチのエリートによって支配されている。必要があれば、彼らは多国間の協調体制を壊すために、貧困者、白人、スキルをもたない階層の人々とも同盟を組むだろう。

 ハンナ・アーレントがファシズム形成の重要な基盤と認識したこの「エリートと群衆の連合」であるが(7)、それは必ずしもファシストになるとは限っていない。しかしそれはグローバリズムと同時に社会的リベラリズムを敗北させ、長期にわたる不安定を生むことになるだろう。この連合が求めていることは何かと言うと、「一国でのサッチャリズム」すなわちナショナリスト版の新自由主義、と説明するのがよいかも知れない。もしそれが成功すると、向こう10年のうちに英国のなかにとげとげしい分裂が生ずるだろう。スコットランドは独立を求めて2回目の国民投票を実現しようとし、その間、イングランドのナショナリストたちが再起してEUに誇張した論戦を挑んでくるだろう。その「連合」はこうした分裂を通じて支配権を手中にする。

 左翼は岐路に立っている。コービンの路線はこれまで二つの主要な社会的グループの連合体で成り立ってきた。それらは、都市在住で、学歴がある人たちや、ネットワークで繋がった若年層、そして1980年代の階級闘争論争で生き残った人たちだ。筆者はそのような生き残り組のひとりとして知っているが、彼らの中には党として2回目の国民投票とEU残留を主張すべきとずっと闘ってきた多くの人々が含まれている。しかし彼らは英国のナショナリズムの虜となっている地域コミュニティとの組織的な繋がりが深いために、コービン流の構想が直面している危険に気づかないできた。その危険とは、新しい中道政党が出現し、EUへの再度の編入に取り組み、労働党支持者の一部がそれに同調することである。そうなれば、コービンは自身の原理原則と投票者の偏見との間を行きつ戻りつする「もうひとりのそこらの政治家」にすぎないように見えてしまうことになりかねない。

 この悲劇は、労働党は明確な戦略をもっていたし、党大会の議決を経て大多数の党員によって認められていたにもかかわらず、この状態におちいってしまったことである。それにしても、1月29日という重要な日に起こったことをみると、労働党の国会議員に、本当に党員が望んでいることを支持して主張する勇気をもった議員があまりに少なかった。歴史的にはそのような対処が初めてというわけではないのだが。

 議会の行き詰まりから現政権が倒れ、二回目の国民投票になる可能性はまだある。60%の有権者がそれを望み、有権者の55%が残留に投ずればそれは実現する。そうすれば新しいサッチャー主義の目論見を完全に払拭することになるだろう。そうなるのを避けたい彼らは経済的危機をも厭わないのだ。結局のところ、この国の命運は、脈々とあるサッチャー主義にどう対処できるかにかかっている。




(ル・モンド・ディプロマティーク 英語版2019年2月号より)