ジュリアン・アサンジのために


セルジュ・アリミ(Serge Halimi)

ル・モンド・ディプロマティーク統括編集長

(仏語版12月号論説)

訳:土田 修



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 さる11月16日、CNNのジム・アコスタ記者は、50人ほどの報道カメラに囲まれ、ペルシャの「もうひとりの博士」アルタバンのように誇らしげに笑みを浮かべ、鳴り物入りでホワイトハウスへの帰還を果たした。ホワイトハウス担当記者である彼は数日前に記者証を取り上げられたが、米国裁判所はトランプ大統領にこの仕打ちの取り消しを命じた。「これはテストでした。われわれはそれに合格しました。この国では憲法修正第1条で報道の自由が謳われ、記者活動が守られているということを記者たちは肝に銘じなければなりません。そのお陰でこの国の政府や指導者が何をしているのかこれからも取材できるのです」とアコスタは大言壮語した。この演劇的な映像はハッピーエンドを迎え、背景の音楽とともにフェイドアウトした。

 6年前にロンドンのエクアドル駐英大使館に逃げ込み政治亡命を認められたジュリアン・アサンジ氏は恐らく、この感動的な結末をCNNのライブで見ることができなかっただろう。というのも彼は囚人のような生活を送っているからだ。英国当局に逮捕され、米国に引き渡される恐れがあり、外出もままならない。また、エクアドルのレニン・モレノ大統領が米国の機嫌を損ねないようアサンジ氏の“客人”としての処遇を厳しくして以来、彼は報道機関へのアクセスが制限されており、さまざまな嫌がらせも受けるようになった。

 アサンジ氏が拘禁状態にあり、米国の刑務所に数十年は投獄してやるという脅しを受けている理由のすべては(2010年にトランプ大統領は彼の処刑を望んだ)、彼が創設した情報サイトにある。このウィキリークスは、十数年来、世界中の権力者たちにとって不都合な情報漏えいの口火をきってきた。アフガニスタンやイラクでの米国の戦争犯罪の映像、米国の産業スパイ、ケイマン島での秘密口座などの情報などだ。チュニジアのベン・アリ大統領の独裁政権は、米国務省の外交電文の漏えいによって体制が揺らいだ。それは米政府の友人である腐敗国家を「硬直した体制」「ほぼマフィアのよう」と形容する内容だった。フランソワ・オランドとピエール・モスコビシという2人のフランス社会党の指導者が2006年6月8日に在仏米大使館に赴き、ジャック・シラク大統領がイラク戦争に断固として反対したことに遺憾の意を表明したと暴露したのもウィキリークスだった。

 だが、いわゆる「左派」の人たちがアサンジ氏を許すことができないのは、ヒラリー・クリントンの選挙陣営からハッキングによって流出したメールをウィキリークスが公表したことだ。この件がロシアの陰謀計画とトランプの勝利に有利に働いたと左派は見ているが、民主党の予備選でバーニー・サンダース候補の選挙運動を妨害するためクリントン陣営が行った策謀をウィキリークスが暴いたことは忘れている。当時、世界中のメディアはそれまでの情報漏えいについてもそうだったように、これらの情報をも躊躇なしに報道してきた。もちろんそれによってメディアの編集責任者が外国のスパイよばわりされたり、投獄の脅しも受けることはなかった。

 アサンジ氏に対するアメリカ当局の容赦ない対応は、彼を見捨て彼の不幸を大いに楽しんでいる臆病なジャーナリストたちによって助長されている。米放送局MSNBCでは、元民主党の重鎮で花形ニュースキャスターであるクリストファー・マシューズが臆面もなくこう提案した。アメリカのシークレット・サービスは「イスラエルのやり方を真似してアサンジを米国に強制連行すべきだ」



(ル・モンド・ディプロマティーク 仏語版2018年12月号より)