「狂騒の20年代」への回帰


セルジュ・アリミ (Serge Halimi)

訳:村松恭平





 欧州連合(EU)の政治リーダーたちからすれば嵐は過ぎ去り、ドナルド・トランプ大統領の登場やブレグジット(英国のEU離脱)といった[厄災]はほとんど払いのけられたようだ。エマニュエル・マクロン氏の圧倒的勝利はEUのリーダーたちを歓喜させた。彼らに忠実なコメンテーターは満足した様子で、「ポピュリズムの高まりに対する初めての決定的な歯止め」だったとすら見なしていた(1)。この勝利を機にフランスの新たな統治者たちは労働法典[の修正]を狙いとして、欧州委員会が進める新自由主義的な政策を力ずくで通そうとうずうずしている。前任者のオランド氏よりも若く、教養があり、彼にはなかった創造性とカリスマ性を少しは備えているマクロン氏によって、以前と変わらぬ政治路線が今後フランス政府内で具現化されるだろう。メディア産業と「戦略投票」が起こした奇跡によってこのわずかな変化が歪められ、あらゆる大胆な改革へと道を開く歴史的転換のようなイメージが作られた。新たな「寵児」を前に陶酔した西欧メディアは[左派・右派]二つの陣営の対立がなくなるという考えを褒めそやすが、それもまた幻想に過ぎない。1983年以降、フランスの左派と右派は実際のところ、同じ政策を順番に実施しているのだから。今やどちらの陣営においてもその大多数が同じ一つの政府の中にいるし、明日には同じ一つの議会の多数派に属すだろう。明快にはなるが、それだけだ。

 腐敗したスペインの右派が政権の座に留まり、オランダでは新自由主義者たちが勝利した。英国・ドイツ政府の保守主義者たちの任期延長が、きっと軽はずみに約束されるだろう。こうしたこと全ては、2016年に際立った「怒りの時」が、政治的出口を見出せないためにその勢いが失われかねない事態を示唆している。青と金色のEUの旗を背景としたマクロン氏の勝利とその直後のベルリン訪問は、結局のところ、アンゲラ・メルケル首相が擁護するEUの主要な政策方針がこれからも力強く継続されることを告げている。その方針のせいで、ギリシャ人たちの退職年金は9%削減されたばかりだ。しかし専門家たちは、その削減が13回目か14回目かを確定する無意味な論争に明け暮れている。気まぐれで虚勢を張るトランプ氏に関して言えば、西欧各国の大使館事務局がしばらくの間不安を抱いたが、彼の大統領としての職務はかなり正常なものになってきた。だが、必要となれば弾劾の手続きが準備されるだろう。あとは数カ月後にイタリアでマテオ・レンツィ氏が政権復帰すれば、「古い世界」の指導者たちの心の平静は完全に保証される。

 共産主義インターナショナル(コミンテルン)は1920年代、ストライキや革命が頻発した時代が過ぎた後、欧州の国々の大半 —— 特に英国とドイツ —— が順調な政権運営を取り戻したと判断し、「資本主義の安定化」を認めざるを得なかった。それでもなお、闘いを放棄しようとしなかったこの国際組織は、1928年9月、事態の落ち着きは「部分的、一時的で不安定」であろうと宣言した。彼らから発せられたこの警告は、通り一遍のもので、空疎な発言だとすら思われた。当時は資産家たちが幸福に酔いしれていた時代、すなわち「狂騒の20年代」だったのだ。ウォール街における株の大暴落(魔の木曜日)はその一年後に突然起こった。




(ル・モンド・ディプロマティーク2017年6月号)