米国ルイジアナ州では刑務所が囚人を募集中


刑務所が支える村の経済


マクシム・ロバン

(ジャーナリスト)


訳:上原秀一


 アメリカの受刑者数は現在230万人である。この数字は、1972年から2010年まで増加の一途をたどってきた。アメリカは、受刑者の人口比で世界最高に位置する国である。ゼネラルモーターズとフォードとウォルマートを足した数を上回る人々が刑務所で働いている。刑務所は、経済において重大な位置を占めている。特に地方経済への影響が大きい。このため、州政府の奨励策により、郡政府が刑務所を設立するようになっている。郡政府は刑務所を満員にしようと努力している。[フランス語版編集部]





州の財政難と郡立刑務所への依存


 アメリカでは、2012年、入所受刑者の人員が約3万人減った。3年連続の減少である。各州は、財政難に直面し、もはや「全刑務所」の費用を負担することができなくなっている。地方レベルの政界においては、刑務所における入所・出所の流れを良くすべく、滅多にない全会一致の状態で共和党と民主党が意見を一致させている。このため、カリフォルニア州——2012年には全米の減少数の半分に相当する入所受刑者が減ったのは同州である——やテキサス州などでは、刑罰を軽減しこれに代わる対応策を講じることが課題となっている。

 一方、ルイジアナ州では、倒産犯罪に対しては10年の禁固刑が維持されていて、強盗罪の再犯にはいまだに24年以上の刑が科されている。受刑者の人口比は過去20年で倍増し、地球上のどこにも見られないほどの水準に到達している。現在4万4,000人強の受刑者が刑務所に収監されているが、これは人口86人に1人に相当する。この数字は、全米平均の約2倍、中国の13倍となっている。

 さらに気になるのは、この地域全体の経済が、このように高い収監率に支えられて存続しているということである。実際のところ、ルイジアナ州政府は、1990年代初頭にファウスト的とも言うべき協定[悪魔との契約の意——訳注]を締結したのである。収監人員が限界に達した時、同州には、刑期を短縮するか刑務所を増設するかという二つの選択肢があった。そして後者の解決策が選ばれた。しかし、慢性的な財政赤字を抱える州政府は、建設費用を負担することができなかった。このため、農村部のパリッシュ(郡)の保安官(注1)に対して、パリッシュ・ジェイル(郡立刑務所)と呼ばれる地方刑務所を建設・運営するよう奨励することとなった。

郡立刑務所による雇用創出


 田舎のパリッシュ(郡)にとっては大きな負担となるこのような投資に対して、州政府は、収監費用として受刑者1人1日当たり24.39ドルを郡保安官に支払っている。ちなみに、ルイジアナ州立刑務所に収監する場合は、55ドルの費用がかかる。12の州立刑務所(長期受刑者用)に対し、160の郡立刑務所が人里離れたパリッシュに点在している。アカディア、ビアンヴィル、ボールガール、カルカシューといった、名前にフランス系移民の言葉の語感を持つパリッシュである(注2)。

 郡立刑務所によって雇用が生み出される。地方の住民は、綿産業の不況に直面しているため、こうした雇用創出に完全に依存するようになっている。「このように景気の悪い辺ぴな場所では、刑務所がビジネスになりました」とルイジアナ大学ラファイエット校の犯罪学者バーク・フォスター客員教授が説明してくれた。多くの住民にとって、最善の職業選択は看守になることである。給料は安い(時給8ドル、すなわち約6ユーロ[約800円——訳注])けれども、退職後にはかなりの年金が保証されるからである。

 最大の投資利益率を確保するためには、稼働率が最大に保たれていなければならない。さもなければ、刑務所は、収益性を失い、看守の解雇を余儀なくされ、ついには閉鎖しなければならなくなる。「ホテルの建設にそっくりです。収益性を確保するために、郡保安官は、刑務所を受刑者で埋めておかなければならないのです」と、タイムズ=ピカユーン紙[ルイジアナ州ニューオーリンズの日刊紙——訳注]で女性記者として働いていたシンディ・チャンさんは言う。このため、郡立刑務所の看守長たちは、毎朝、受刑者を回してもらうために大都市の刑務所に電話をかけて回っている。州内最大のニューオーリンズや州都バトンルージュといった大都市では、刑務所の定員が超過しているからである。このような受刑者の移送は、多くの場合、看守長仲間のコネによって行われる。田舎の刑務所の中には、この仕組みを非常にうまく利用しているため、受刑者を回してもらうのに電話をする必要がないというところもある。「哀れな受刑者たちを利用して金を稼ぐのは好きではありません」とチャールズ・マクドナルド郡保安官は言う。彼は、刑務所を所有するリッチランド郡の郡保安官である。リッチランド郡は、州北部に位置する人口2万のパリッシュ(郡)である。「しかし、どのみち彼らは刑務所に行くのですから、行くのが私のところでも同じことです」

80人の大部屋


 ルイジアナ州政府は、25年前から一つも刑務所を新設していない。田舎のローコストな刑務所が、今日、同州の受刑者の半数を収容している。入所者一人当たりの予算は極限まで減らされていて、その結果、生活環境は最低のものとなっている。フォスター客員教授は言う。「保全費、看守の給与、そして群保安官の利益を除くと、受刑者のための予算は大して残りません。受刑者は、数十床の大部屋で寝ています。一部屋80人になることもあります。食費はごくわずかで、医療は提供されません」。

 郡立刑務所は、1年未満の刑に処せられた受刑者のためのもの、ということになっている。しかし実際の平均在所年数は、8年半に及ぶ。ほぼ5人に一人は10年以上の刑に服していて(注3)、しかも矯正教育を受けることは期待できない。ルイジアナ州では、皮肉にも、社会復帰政策は、事実上、長期刑や……場合によっては終身刑を科された受刑者専用のものとなっている。古くからある州立刑務所では、受刑者に対して、精神的ケアや医療、さらには娯楽や就労訓練プログラムまでもが提供されている。アヴォイルズ刑務所では、毎年、ロデオ大会が一般公開で開催される。アンゴラ刑務所の受刑者は、大多数が終身刑に服しているが、ここでは自動車修理工や暖房設備工の職業訓練が行われている。郡立刑務所にはこのようなものは一切無い。「ルイジアナ州では、社会復帰策は、刑務所から決して出ることのない人々によってほぼ独占されています」と、非政府組織ルイジアナ少年司法プロジェクト(Juvenile Justice Project of Louisiana)のダナ・カプランさんは嘆く。

 選挙で選ばれた住民代表である郡保安官たちは、刑務所からの収入を、部下の新しい備品の購入費用に当てている。車両、武器、コンピュータ、防弾チョッキなどを買うのである。刑務所の利潤がいくらかを正確に計算するのは難しい。一人当たりの食費は1日1.5ドルにも満たないし、娯楽や社会復帰のための活動予算は微々たるものである。だから、必要経費が州政府による24.39ドルに達するはずはない。出所時に一人一人の受刑者に気前よく与えられるバス・チケットと10ドルを計算に入れたとしてもである。






(1)「パリッシュ」とは、アメリカ各州で「カウンティ」と呼ばれる行政区画(郡)に対するルイジアナ州独自の呼称である[原注]。郡は、州の下位の行政区画であり、郡保安官は、選挙で選ばれる郡の最高職で司法権と警察権を持つ[訳注]。
(2)ルイジアナ州には、18世紀にフランス系カナダ人が多数移住した。[訳注]
(3)ルイジアナ州矯正局(バトンルージュ)による2013年1月のデータ。


(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2013年11月号)