アマゾンはブラック企業か?


ジャン=バティスト・マレ

(本紙特派員)


ジャーナリスト。著書に『アマゾン、世界最良の企業潜入記』がある。
Jean-Baptiste Malet, En Amazonie. Infiltré dans le «meilleur des mondes» ,
Fayard, 2013 この著作執筆のために、著者は2012年11月、フランスのアマゾン
配送センターに臨時工として勤務した。


訳:石木隆治


 IT産業の覇者たちはハリウッド映画に取り上げられるまでになった。彼らの登場する画面はあくまでもすべすべしており、その色調はあまり愉快なものばかりでもないが、IT産業の非物質性、水平性、創造性を示唆しているかのようだ。しかし、アマゾンを調査してみると、別の表情が浮かび上がる。巨大工場の中では、日本的経営から習得したと思われるマネージメント技術も駆使しながら、人々がコンピュータに操られ、へとへとになる姿だ。[フランス語版・日本語版編集部]





 会議室の壁に貼ってある《フェル・ディ》(ドイツのサービス産業労働組合連合)のポスターから目を離したイルムガルト・シュルツさんは、突然立ち上がって発言した、「日本のアマゾンでは最近、倉庫付近の草を食む要員としてヤギを何頭か採用したそうです。会社はヤギに、何と、われわれと同じ社員証を首から提げさせているそうですよ! 氏名、顔写真、バーコードなど個人情報が全部詰まった社員証をです」。バート・ヘルスフェルト(ドイツ・へッセン州)にあるアマゾン社の定例社員会議でのことだ。配送センターのこの女子従業員が1枚のポスターを使って要約していたのは、アマゾンの企業哲学だ。この企業は、消費者がパソコンで数回クリックするだけで、箒一本からマルセル・プルーストの作品、耕運機に至るまで購入でき、しかも48時間以内に届けてもらえるというサービスを提供する多国籍ネット販売会社であるが(注1)、その企業哲学はこういうものである。


世界に拡がるアマゾン、過酷な労働条件

 アマゾンは世界各地に89ヶ所、総面積にして700万㎡に及ぶ配送センターを所有し、そこでは計10万人が立ち働いている。20年足らずでIT産業の最先端に躍り出て、今やアップル・グーグル・フェイスブックと肩を並べる存在だ。1997年の株式上場から売り上げが急速に伸び、2012年には420倍の620億ドルに跳ね上がった。創立者でCEOのジェフリー(ジェフ)・プレストン・ベゾス氏は、リバタリアンでマニアックな経営者であるが、マスメディアには好ましいイメージを与えている。というのは今年8月、2億5000万ユーロ――同氏個人資産の1%に相当――を投資して、由緒あるアメリカの日刊紙『ワシントン・ポスト』を救ったからだ。ビジネスの成功が労働条件の問題よりも大きな話題になりやすいのは確かである。

 ヨーロッパの拠点としてアマゾンはドイツを選んだ。同国には8つの配送センターがあり、現在9つ目を建設中である。ソニャ・ルドルフさんの運転する車は《アマゾン・シュトラッセ》(注2)という名の大通りを通過する。町が多国籍企業の進出にと7百万ユーロ以上もの助成金を出したため、そう名付けたのだ。それから彼女は灰色の巨大な刑務所のような建物を指さす。有刺鉄線の後ろに倉庫が現れる。「《FRA-1》(注3)の3階には、窓も、通路も、エアコンもありません」と元従業員である彼女は言う。「夏には気温が40度を超え、体調不良になる人がとても多いのです。ある日―― 一生忘れられない思い出です――私が「ピッキング」(棚から商品を採取すること)をしていたら、床に倒れて吐いている若い女性を見つけました。顔が真っ青で、本当に死ぬかと思いました。担架がなかったので、マネージャーが私たちに木の板を探してくるようにと言いました。それに彼女を寝かせて救急車まで運んだのです」。

 似たような出来事がアメリカでも報道された(注4)。フランスでは2011年にモンテリマール(ドローム県)の倉庫で寒さが従業員たちを苦しめた。彼らはパーカに手袋、ボンネットという服装で働くことを強いられ、それで12人ほどがストライキにはいり、暖房を獲得することになった。アマゾンの創始者が世界の長者番付19位まで躍り出た原因の一部はこうした過酷な労働にあるのである(注5)。

 インターネット上のこのスーパーマーケットの特性は「マーケットプレイス」のプラットフォームを通じて小売業者が自分たちの商品をアマゾンのサイトで提供できるようにしていることにある。そこでアマゾンの商品と直接競争するのだ。共に売り上げが延び、「ロングテール」効果が増大し、そのことが企業の成功の秘訣となるのだ。ロングテールとは、需要が少ないが在庫コストもかからない商品に対する少量の注文をとりまとめる方式である。この仕組みは消費者にとって役立つので、この巨大企業アマゾンの販促活動に書店は取り込まれることになる。そして、アマゾンは書店の顧客を奪い、書店を破壊する。フランスの書店業の労働組合の調査では、同じ売上高でみた場合、地域の書店はインターネット販売よりも18倍の雇用を生み出していた。アメリカ書店協会(ABA)は2012年度だけで4万2千人の書店従業員がアマゾンの影響で職を失ったと推計している。多国籍企業アマゾンの1千万ドルの売り上げは、書店業において約33人分の雇用を消滅させることを意味する。

 さらに、消えるポストとアマゾンの配送センターに新設されるポストは完全に対称的だ。一方の消えるポストは有資格であり、多様性があり、持続的で、都心部に位置し、管理と社交性、接触、助言を兼ね備えた仕事である。もう一つのほうは、郊外で「販売工場」が姿を現し、小包が作られ続け、無資格の労働者によって扱われる。彼らが雇われたのは今のところロボットよりも安く付くからに過ぎない。しかし長くは続かないだろう。《キヴァ・システム》というロボット会社を2012年に7億7500万ドルで買収して以来、アマゾンは倉庫に小さな小型の自動機械の設置を進めているからだ。オレンジ色の直方体で高さは30センチメートル、例えば積荷を移動させるために棚の下に入ることができ、モデルによるが400キロから1300キロに耐えられる。

 顧客の注文を受けてから発送まで、商品の移送にかかる時間をたった20分に短縮することが重要なのだ。ベゾス氏の目標とするところは今では伝説と化している。つまり、いかなる商品でも紹介・販売し、どこへでも注文を受けた日に届けるという目標である。創設以来、アマゾン社はシステム・サーバーに巨額を投じ、その動作性能を上げ続けている。そうすることで物流の効率化を図り、自社ショッピング・サイトにさらなるビジネスの可能性を与えている。過去の利用者には常にサイトから次の商品が提案されるが、それを可能にしているのは、顧客の個人情報と買い物履歴との照合である。そして一切無駄にすることがないので、余った情報リソースは「アマゾン・ウェブ・サービス」を通じてさまざまな企業へと貸し出される(注6)。


アマゾン配送センターはどこでも同じ

 アマゾン社の配送センターは、その建設地がどの国であろうと似通った造りをしており、労働システムも似通ったものだ。どれも高速道路のインターチェンジにほど近い、失業率が全国平均を超える地域といった立地環境にあり、警備会社の厳しい監視下におかれる。鉄板でできたこれらの四角い建物は、10万平方キロメートル以上の広さを誇ることもあり、これはサッカー・グラウンドほぼ14個分にあたる。配送センターでは、バレエでも踊っているかのようなリズムで忙しげに大型トラックが動き回る。アマゾンの従業員たちが、3分ごとにセミトレーラーを荷物でいっぱいにする。2012年のクリスマス・シーズンには、アメリカ圏内だけでも1秒間に300個もの商品を売り上げた。

 1億5200万人の顧客に提供される夥しい品物が配送センターに積み重なる。金属製の棚が連綿と連なる中、工員たちが企業内規則により喋ることを禁じられて働いている。誰もが盗みの可能性があるとみなされ、警備員により綿密な検査を受けねばならない。帰宅時も、休憩時も、検査装置を通過しなければならない。うんざりするような検査のために長蛇の列が出来るので、休憩時間は短くなる。帰宅時、検査後にタイムカードを打刻することは許されていない。すでにアメリカでは、ケンタッキー、テネシー、ワシントン州のセンターの労働者が4回告訴し、未払いの待ち時間賃金を要求した。未払い分は彼らの推計によると週に40分に及ぶという。


配送の仕組み

 在庫品の分類・管理は、コンピュータにより《無秩序保管》(カオティック・ストレイジ)で処理される。品物は棚の上にランダムに置かれる。この「混沌とした整頓」が、従来の保管法よりも、よりいっそうの柔軟性を可能にするのである。各品物の需要と供給の変動に応じて予備の場所を見込んでおくのは無駄であり、全ては適当に積んでおけばよいとするのである。棚には幾つもの段があり、その各段にはいくつもの仕切りがある。この仕切りは英語で「ビン」と呼ばれる。このビンの中に、アントニオ・グラムシの書物、男性用パンツの箱、クマのぬいぐるみ、バーベキュー用調味料、フリッツ・ラングのDVD『メトロポリス』(注7)が、隣り合って収められている。 「納品受付所」では、《荷物受取係》がフォークリフトの荷台を崩し、商品の参照番号を入れる。次にス《整理係》が、巨大な棚の空いている場所に品物を置く。ごたごたとした市場のようだ。市場の中の品物はバーコード読み取り器《Wi‐Fiスキャナー》によってのみ位置を確認できる。従業員の歩行距離は直線にして数キロにわたり、気が遠くなる程である。その行程を短縮するのが最新技術だ。商品のもの凄い堆積の中で、ひどく疲れる反復作業を実行する従業員たちの生産性を、最新技術が誘導し、コントロールし、計測している。「生産」と呼ばれている部門では、《商品採取係》が、同じくスキャナーに誘導され、担当の棚を歩き回る。彼らは商品をひたすら取り続けるため、一回の勤務時間につき20㎞以上を歩く。これは人材派遣会社の公表する数字だが、組合は実際より低く見積もっていると異議を唱えている。

 商品が取り出されると同時に、スキャナーが《商品採取係》に次の商品を取り出すよう命じ、カウントダウンが始まる。集配の道順はコンピューターが決めており、そのお蔭で、最短の道順で集配することが可能だ。採取係は、カートが商品で一杯になると、カートを《包装係》のところに持って行く。包装係は場所を動くことはなく、商品を次々と包装し、そして小包をコンピュータ管理された巨大コンベアに乗せる。このITコンベアはアマゾンの微笑みマークの付いた小包の重量を計り、住所ラベルを貼った後、郵便配達か、国際運送かに振り分ける。 「小包にプリントされているアマゾンの微笑みマークは、僕たちの微笑じゃありませんよ」とイエンス・ブルーナーさんは言い放った。彼は38歳で、2003年から《整理係》として働いている。彼は7年間にわたり、アマゾンでの臨時雇いと失業とを繰り返してきたが、2010年以降、短期雇用契約を余儀なくされている。アマゾン側が彼を正社員として雇用することを拒んでいるためだ。世界中の同僚たち同様、彼も仕事に関して家族や友人、そしてジャーナリストに話すことを固く禁じられている。「僕たちは会社の話を口外してはいけない、と強要されているんだ。産業秘密を守るためって訳じゃないよ。そんなもの誰も知らないよ。労働条件の劣悪さを口外しないためさ」、彼はそう断言した。


全世界から集まる労働者

 年末の「Q4」(第4四半期のこと)と呼ばれる時期になると、夜勤班が組織される。各工場はクリスマス・プレゼントを発送するために、臨時労働力が欠かせない。ハイナー・レーマンさんは2010年にフェル・ディから出向してきた組合専従職員の一人だ。彼の役目は組合運動をアマゾンにもたらし、そして根付かせることである。レーマンは次のように語った。「この時期、労働者の人数は急増し、物流センター2か所で労働者の数は3,000人から8,000人以上に膨れ上がります。ヨーロッパ中から集まった臨時労働者がバート・ヘルスフェルトに集まり、劣悪な状況下で滞在するんです。バート・ヘルスフェルトでは、何千もの臨時雇用に対処するために、アマゾンは中国人事務員たちを雇いました。去年、事務員たちは机も何もないだだっ広い広間で働き、契約書を一枚一枚床の上に積み上げていました。シュールな光景でしたよ」。スペイン・ギリシャ・ポーランド・ウクライナ・ポルトガルの失業者が請負会社に雇われ、長距離バスでバート・ヘルスフェルトを目指してやってくるのだ。  ブルンマさんが説明する。「経営者たちは国際的な人材を集めていることを自慢していて、そのことを自慢の種みたいに吹聴するのです。アマゾンはパーティーを開いたことがあるのですが、その時出席している人全員の国旗を掲げるように言いました。44種類ありましたよ! スペインの人が一番多かったですね。中には立派な学歴のある人もいました。研究者、社会学者、歯科医、弁護士、医者。みんな失業中で、だから臨時雇用でもこうしてやってくるのです」。

 ドイツ人のノルベルト・ファルティンさんはITビジネス業の元管理職。2010年に突然に解雇され、有無を言う間もなくバート・ヘルスフェルトの臨時採取係にならざるをえなかった。「真冬のことです。私は他の5人の外国人と3か月間バンガローに寝泊まりしました。普段は避暑客用のバンガローです。ですから暖房器具を備えていませんでした。あんなに寒い思いをしたことは今までに一度もありません。我々は皆大人でしたが、子供用のベッドに代わる代わる寝ました」。ここでは、短期契約を反復し、その後任期なし雇用契約に漕ぎつける可能性が場合によってはあるのだが、その間に組合に参加したり、いわんやストライキしたりすることは慎重な策とは言えない。クリスマス前の出稼ぎ臨時労働力の大幅使用は、フェル・ディ組合先導のストライキを阻む効果がある。アマゾンはこの時ばかりは弱みを持っているのだ。なにしろこの短い期間に年間売上の70%を記録するからだ。


日本的経営?

 「懸命に働こう、楽しもう、時代を創ろう」というアマゾンのスローガンが、アマゾンのどの配送センター内にも貼ってある。この言葉を標榜しながら、従業員たちは厳格な経営手法、即ち日本の自動車会社からヒントを得た「5S」で統率される。また、温情主義的な催しを幾度も行う。勤務中でも勤務外でもだ。ルドルフさんが語った。「マネージャーはQ4 の間、倉庫に音楽をボリュームを一杯にしてかけっぱなしにします。従業員を激励するためです。クリスマスの時期のある日には、私たちの仕事を急かすように、ハード・ロックをボリューム全開で流しました。あんまりに激しい音だったので私は頭が痛くなり、動悸がしました。マネージャーに音を下げてくれるように頼むと、私をからかってこう言うのです。それはあなたが50を超えているからで、ここは若者の会社だからね、と。私はシニア世代ですが、25歳の若い人と同じ能率で作業をするように言われました。しかし主人の死後、他を選びようがなく、やむなくこの仕事を受けたのです」。


ベゾス社長

 バート・ヘルスフェルトの従業員たちは、ベゾス社長に会ったときのことをよく覚えている。それはドイツ初のアマゾン配送センターができた2000年の夏、落成式でのことだった。社長はヘリコプターでやってきて従業員用駐車場に降り立ち、記念プレートにペンキで手形をつけた。シュルツさんは次のように語る。「アマゾンでは会話も読み書きも全て英語で、作業員は《ハンド》と呼ばれています。つまり、小さな手、ということです。ベゾス社長は両手を掲げマイクに向かって言いました、『私もあなた方もみな《ハンド》です。私たちは仲間ですから。勤続何年かの後には会社の株主になれます』(注8)と。そのとき彼は私たち全員が1つのビッグ・ファミリーだと言いました。その後もたまに電話をかけてきて、その声を拡声器でセンター中に流させ、私たちに気合を入れます。ことは順調に進んでいました。アマゾンで働いていることを誇りに思ったものです。私たちにとってアメリカン・ドリームでしたからね。ところがそれはすぐに悪夢に変わりました。だからこそ私は今ストライキに参加しているのです」。

 組合会議のテーブルの上にはチラシ、バッジ、マーカーの入った法律資料、最近のストライキに関する新聞の切り抜きなどがところ狭しと置いてある。午後のシフトの作業スタッフたちがタイムレコーダーを押すべく、慌ただしくテーブルから去っていく。「私が初めてここに来たときは本当に大変でした。彼らは恐がって、われわれと話そうともチラシを受け取ろうともしませんでした」と組合を指導してきたライマン氏は打ち明ける。そうこうするうちに、この日2回目の会議に午前シフトの組合員たちが集まって来る。《イケア》で10年以上働きながら労働法についてしっかりした知識を得たライマン氏は、2010年にフェル・ディの専従となった。彼はアマゾンのほとんどの従業員が政治に無関心で労働組合について何も知らないことを認識した上で状況に適応し、中核となるメンバーから始めた組織化活動のお陰で、徐々にではあるが結果を出してきた。


抵抗する労組

 たとえば2011年から、組合員たちは色のついた小さなシールをドイツの配送センターのあちこちに貼っているが、どのシールにも労働権の侵害・不当な処置・経営管理の怠慢などについての疑問が匿名で記入されている。そうした問題の具体例は従業員たちが選んでおり、書くのは他の同僚に頼み、誰の質問かわからないようにしている。仕事の場に何千と貼られたこれら小さなシールは、職場の雰囲気を険悪にすることはないが、幹部層の中に動揺を広げた。毎週開かれる全員会議での討議の結果、バート・ヘルスフェルトとライプツィッヒ(ザクセン州)から、たくさんの要求事項がどんどん持ち上がった。

 ライプツィッヒでは誰も、フェル・ディ組合が交渉して決めた配送部門用の部門賃金を貰っていない。旧東ドイツの協定賃金は、最低時給10.66ユーロを見込んでいるが、アマゾンでは自社の俸給法により9.3ユーロである。バート・ヘルスフェルトでも同じような差があり、部門賃金時給12.18ユーロに対し、配送センター従業員は9.83ユーロである。フェル・ディ組合の最初の集まりが行われてから二年半後には、600人近くのドイツ人従業員が定期的にストライキをし、工場にピケを張り、配送部門の協約賃金適用を要求するようになった。その結果として、組合員とサポーターたちが、これ見よがしに。「懸命に働こう、楽しもう、協約賃金を結ぼう」と書いた小さな赤いリストバンドを、働いている時もつけるようになった。

 成果はどんなものだろう? ルドルフさんはバート・ヘルスフェルトの中心街で昔の同僚に会い、成果を自分で確かめた。「組合のイメージはとっても変わりました。人々は組合に参加することを次第に恐れないようになってきています。屈辱を受けた時には組合に参加することがほとんど反射行動になっています。みんな自己の権利と尊厳のために戦いたいのです」。

 フランスでも今年6月10日、サラン(ロワレ県)配送センターのおよそ百人の従業員が、労働総同盟(CGT)の呼びかけに応えて、同じくストをした。そのあくる日、ストをした全員が一人一人呼び出された。CGTのクレマン・ジャマン氏が話す。「私は組合員というだけの理由で、仕事の時間中に勝手な理由をつけて身体検査をされました。それを拒むと、イスに座っているように言われました。表向きは警察が来るまでですね。みんなの前で、6時間座ったままです。警察は来ませんでした。次の日も、その次の日も、私に同じようなことをしようとしたので、CGTは告訴しました」。アマゾン幹部は組合を憎むあまり、ジャマンさんにしたような嫌がらせのみならず、組合を侮辱することにも没頭している。最近、アマゾン内部でおふざけビデオが作られ、筆者の私もそれを見ることができたのだが、内容は二人のサラン・センターの人事部幹部が、組合員のようにメーキャップして、CGTの旗を振っているのである。


コンピュータで管理される従業員たち

 サラン配送センターの作業スタッフ、「モハメド」さんは匿名を条件に重苦しい口調で次のように打ち明ける。「仕事のテンポが速くてヘトヘトに疲れるんですよ。その代償にわれわれは会社から何をもらえると思いますか? 『楽しみなさい』ですよ。休憩時間にゲームをしたり、チョコやキャンディの配給などはありますが…。でも、個人的にはピエロの格好をしてトラックの荷下しをするなど納得できません」。実際に、従業員たちは常日頃から、《魔法使い》や《バスケット選手》など幹部が決めたテーマの服装をして仕事を始めるよう促される。モハメドさんはさらに次のように訴える。「そうやっている間も、われわれの生産性はもちろんコンピュータで記録されています。われわれは『トップ・パフォーマー』になれ、己に勝て、生産性の数字と絶えず闘え、と叱咤激励されます。今年の6月からは。従業員は仕事を始める前に全員そろってウォーミング・アップ体操までさせられています」。

 驚くべきことに、内部規約では各従業員の生産性は恒常的に上昇すべきだとされている。その実績はリアル・タイムに記録され、上司はそれを見て彼らが倉庫内のどこにいるか常に把握し、各人の生産性の詳しい記録を確認し、しかも作業員どうしで成績を競争させることもできるのである。ドイツの配送センターでライマン氏が最近知ったことだが、「こういった個人データはドイツの配送センターから毎日アメリカのシアトルにコンピュータで送られ、そこに保管されています。これは完全に違法行為なんですよ!」という。かつてフランス・アマゾンの幹部だったシャムディさんは、ルクセンブルグで受けた幹部研修で、作業スタッフの誰も知らないことが実際に行なわれていることを知った。「作業員の生産性データは全て刻々と記録され、一箇所に集められた後、シアトルに送られています」。


「意味論的な」企業、アマゾン

 複雑な意味を担う「意味論的」企業アマゾンは、従業員たちを競争させるかと思えば、また「異常を報告する」ことも促される。先程の匿名希望の「モハメド」さんが説明してくれたことによると、「例えばそれは普通に段ボール箱が入り口を塞いでいることだったりするけど、おしゃべりしている同僚でもあるんだ。そうしたらその同僚のことを言いつけなければならない。昇進して、『リード』つまり監督になるのによく行われることなんだ」。アマゾン元管理職のシャムディさんが思い起こして言う。「ある日同僚がジェフ・ベゾスの財産総額を尋ねてきて、私はその額は吐きたくなるよと答えました。同僚はそれを密告し、私は『アマゾン精神』を批判したとして、警告を受けました! 職場の雰囲気はよくありません。みんな監視し合っています。臨時従業員は人間扱いされていません。これには耐えられませんでした。私は製造業の世界をよく知っているつもりです、特に自動車の世界をね。ですが、アマゾンでの経験は、私のエンジニアのキャリアの中でも断トツに最悪です」。

 転倒・体調不良・ベルトコンベヤー上での指切断・通勤中の死傷事故、いずれも疲労の結果である、アマゾンでは労働事故が尽きない。しかしマスコミは株価の動向、ベゾスの奔放さ、新しい配送センターの建設といった賞賛記事ばかり書きたがる。しかしながら、もうすぐ3つの配送センターがポーランドに設置されると、ポーランド従業員の低賃金がドイツ従業員の賃金引下げ圧力となるだろう。マスコミは新しい雇用の創出を称えるが、その雇用は微々たるもので、目に見えない。そしてやがて近隣商売における雇用をいっそう破壊するだろう。

 フェル・ディ組合のストの支持者で、新聞記者のギュンター・ヴァルラフさんは、アマゾンの目覚ましい発展を注意深く追っている。ケルンで自ら、ネット上の巨大企業アマゾンと喧嘩をした時のことを話してくれた。「従業員たちの労働条件を知り、私はすぐにボイコットを呼びかけ、出版社に私の本をアマゾンから引き上げてほしいと頼みました。出版社は困りましてね、何故ならこの出版社はアマゾンで15%の売り上げがあったからです。しかしそれでも議論の結果、私の要求に同調してくれました。しかしアマゾンはそれ以降も、卸売から仕入れ、私の本を売り続けています。これは、残念ながら私にはどうすることもできません。ですから周囲からは悪口を浴びせられましたよ。『口ではうまいこと言ったって、お前は本を売り続けているじゃないか』と。…実際のところ、アマゾンとは個人的に戦うことはできません。とてもはっきりしたポリシーをもっている企業です。この会社の体制は「アマゾンで買い物をするかしないか」という単純な、そして「ニュートラルな」問題を提起しているのではありません。そうではなく、政治的な問いです。すなわち、我々がどういう社会を選択するかという問題です」。






(1)繰り返しの要請にも関わらず、アマゾンは我々の質問に回答しようとしなかった。
(2)同様に《アマゾン通り》はドイツのグラーベンやプフォルツハイム、コーバーン=ゴーンドルフにあり、フランスでもスヴレ(ロワレ県)とロウィン=プランク(ノール県)の2か所にある。
(3) アマゾンの配送センターは全て英文字3つと数字1つから成っている。配送センターは最も近い国際空港の名前に由来している。この場合はフランクフルトである。
(4)スペンサー・ソペール『アマゾン配送センターの内部』(未邦訳)Spencer Soper, 《Inside Amazon’s warehouse》, The Morning Call, Allentown (Pennsylvanie), 18 septembre 2011
(5)ベゾス氏は、アメリカの雑誌『フォーチューン』誌で「2012年の実業家」に選ばれた。
(6)アマゾンはネット上に労働市場も開設している。このアマゾン・メカニカル・ターク(《機械仕掛けのトルコ人》)は、インターネット利用者に対して小額の報酬が受け取れる小規模の仕事を提案している。Pierre Lazuly,《Télétravail à prix bradé sur Internet》, Le Monde deplomatique, août 2006.
(7)フリッツ・ラング『メトロ・ポリス』は資本家(地上に住む)と労働者(地下に済む)と、さらにロボットが加わって闘争を繰り広げる空想科学映画。ドイツ表現主義の代表的作品。――[訳註]
(8)アマゾンはストックオプション制度を採用している。ストックオプションとは、あらかじめ定められた価格で株式を購入する権利のこと。この自社株購入権を報酬の一部として従業員に与えるのが「ストックオプション制度」である。たとえ賃金が低くても、自社株の値上がりが続けば労働者にも株式差益の恩恵があるためにその埋め合わせが出来るという、従業員を企業のパートナーに位置づけるとされる方式だが、低賃金や劣悪な労働条件を容認する傾向がある。――[訳註]


●コラム「脱税するアマゾン」

 スペイン・アマゾンで本を買ったとしても、あるいはフランス・アマゾンで掃除機を買ったとしても、その請求書はルクセンブルクのアマゾンEU社によって作成される。このアマゾンEUの社員数はたかだか235人でしかないが、2012年には売上高100億ドル近くを記録した。しかし賢い資金繰りのおかげで、2040万ドルの利益しか計上されていない。アマゾンEUは、ヨーロッパ各地に設置された施設の国ごとの違いを調整している。この調整により、多国籍企業アマゾンの作業である物流、市場での売買、供給業者との関係、等々.... が実際に機能している。こうしたピラミッドの頂点に位置するのがアマゾンの資金貯蔵所、《アマゾン・ヨーロッパホールディングス・テクノロジーSCS》である。これ自体、デラウェア州に登記された三組織によってコントロールされている。デラウエア州とはアメリカ国内のタックスヘイブン。

 こうした財務の階梯に位置する《アマゾン・ヨーロッパホールディングス・テクノロジーSCS》――ルクセンブルクにも登記している――がお金を呑み込み、吐きだす。2011年の終わりには、19億ユーロの残高を蓄積した。しかし、一人の社員も雇っていない。合法的脱税の複雑な仕掛けにより、アマゾンは配送センター設置国に税金を払わず、莫大な額を吸い取っている。アマゾン幹部のアンドリュー・セシルがイギリス議会委員会委員たちに資金計画表を提示して以来、フランスにおける売上高(CA)はわかっている。その額は2011年に8億8900万ユーロに達した。だがフランス・アマゾンは国税庁にそれより著しく少ない額を申告したので、現在1億9800万ユーロの課税更正の対象となっている。

 課税更正などどこ吹く風だ。フランス・アマゾンは国内の各配送センターを管理し、数千人の社員を抱えるが、2012年に売上高7500万ユーロと利益320万ユーロを公表した。シャロン=シュル=ソーヌ県でのフランスの三番目の配送センター設置の際には、その建設にあたって生産再建省大臣アルノー・モンテブールから支援・擁護を受け、公的助成金を授かった。国と、ソーヌ=エ=ロワール県議会の助成金に加え、社会党所属フランソワ・パトリアが議長を務めるブルゴーニュ地方議会が、112万5000ユーロをアマゾンに融資し、任期なし雇用契約(CDI)の社員250名の雇用に適用された。アマゾンの元マネージャーだったベン・シハムディは語る。「政治家が見ようとしない最悪のことがあるのです。それは、アマゾンは非常に重大な計画に巨額投資をしているのですが、それはロボット化なのです。この250人の雇用は、必ずや消えてゆくでしょう」。

ジャン=バティスト・マレ


(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2013年11月号)